
以前 第18回 https://www.olinas.co.jp/media/knowledge/a277
第19回 https://www.olinas.co.jp/media/knowledge/a276
「許容誤差」を取り上げ、誤差の見積もりについて解説しましたが、誤差計算の詳細は省略し、計算方針の概略と結果を示しただけでした。
この誤差計算について質問がありましたので、計算方法を応用しやすい形にまとめてみました。内容的には、多項式の1次近似計算ですので、「面白くない」ことは請け合えます。
1.加算(抵抗の直列接続、コンデンサの並列接続などの場合)
R=R1+R2、R1の誤差e1、R2の誤差e2、Rの誤差E、とする。
R(1+E)=R1(1+e1)+R2(1+e2)=R1+R1 e1+R2+R2 e2=(R1+R2)+(R1 e1+R2 e2)
両辺をRで割ると、
1+E=(R1+R2)/R+(R1 e1+R2 e2)/R=1+(R1/R)e1+(R2/R)e2
両辺から1を引いて、
E=(R1/R)e1+(R2/R)e2={R1/(R1+R2)}e1+{R2/(R1+R2)}e2
2.逆数(抵抗の並列接続、反転アンプのゲインなどの場合)
Rの誤差をe、1/Rの誤差をEとする。
(1/R)(1+E)=1/{R(1+e)}=(1/R){1/(1+e)}
両辺を(1/R)で割って、
1+E=1/(1+e)
右辺の分母、分子に(1-e)を掛けて、分母の誤差項を2次として、無視する
1+E=1/(1+e)=(1-e)/{(1+e)(1-e)}=(1-e)/(1-ee)≒(1-e)/(1-0)=1-e
両辺から1を引いて、
E≒-e
3.乗算(除算は、逆数の乗算として扱う)
R1の誤差e1、R2の誤差e2、R1R2の誤差E、とする。
R1R2(1+E)={R1(1+e1)}{R2(1+e2)}=R1R2(1+e1)(1+e2)
両辺をR1R2で割って、
1+E=(1+e1)(1+e2)
右辺を展開し、2次の誤差項を無視すると、
1+E=(1+e1)(1+e2)=1+e1+e2+e1e2≒1+e1+e2+0=1+e1+e2
両辺から1を引いて、
E≒e1+e2
上記の3つの式を公式のように使うことで、実際の誤差計算の見通しがよくなると思います。例として、反転アンプのゲイン誤差を計算してみます。
反転アンプのゲインG=RFB/RIN、Gの誤差E、RFBの誤差e1、RINの誤差e2、とします。
G(1+E)=RFB(1+e1)/RIN(1+e2)
逆数の式を使って、1/{RIN(1+e2)}=(1/RIN)(1-e2)を代入します。
G(1+E)≒RFB(1+e1)(1/RIN)(1-e2)
この式は、RFBと(1/RIN)の乗算ですので、
G(1+E)≒RFB(1/RIN)(1+e1-e2)=(RFB/RIN)(1+e1-e2)=G(1+e1-e2)
したがって、
E≒e1-e2
誤差は、抵抗ごとに独立に、±の値をとりますので、誤差見積においては、(e1-e2)と(e1+e2)は同等です。
免責
計算には万全を期しておりますが、ここに示した計算結果の利用に対しては、何らの保証もいたしません。必ず、ご自身で検算された上で、ご利用ください。