
電気電子回路における電源回路の基礎 -電源IC(1)-
①はじめに
現在、半導体メーカー各社から、多種多様な電源ICが供給されています。以前に比べて、性能が向上し、便利な機能を持つものなど、選択の幅が広がっています。特段の事情が無い限り、ディスクリート素子で電源回路を組むよりも、これらの電源ICを使うほうが有利ではないかと思います。
②電源IC
さて、電源ICを動作原理から大まかに分類すると、リニアレギュレータとスイッチングレギュレータに分けることができます。以下、私なりの動作原理についての解釈です。
リニアレギュレータ
内部に可変抵抗(に相当する制御素子)があり、負荷電流の変化、あるいは、入力電圧の変化に応じて抵抗値を調節して出力電圧を一定に保つ。可変抵抗を負荷に直列に配したタイプ(シリーズレギュレータ)と、固定抵抗を負荷に直列、かつ、可変抵抗を負荷に並列に配したタイプ(シャントレギュレータ)がある。
スイッチングレギュレータ
入力からインダクタにエネルギーを蓄え、出力に放出することで、理論的には効率100%となる。入力と出力の電圧比は、スイッチングのデューティー比のみで決まるため、これを制御することで出力電圧を一定に保つ。ブラックボックスとして動作を見ると、AC電源での電源トランスのようにインピーダンス変換をしていると考えられる。
この他にチャージポンプIC、LEDドライバ(定電流駆動電源IC)などがありますが、以降では、シリーズレギュレータ、シャントレギュレータ、スイッチングレギュレータを比較してみます。
入出力関係、電力損失
以下、入力電圧をVin、出力電圧をVout、入力電流をIin、負荷電流(出力電流)をIout、電力損失をPdとし、原理的な関係式を示します。IC内部のコントロール回路の消費電流は、無視しています。なお、比較しやすいようにスイッチングレギュレータは、降圧タイプのみを扱います。
シリーズレギュレータ
Iin=Iout
Pd=(Vin×Iin)-(Vout×Iout)=(Vin-Vout)×Iout
シャントレギュレータ
直列抵抗をRsとします。
Iin=(Vin-Vout)/Rs
Pd=(Vin×Iin)-(Vout×Iout)=(Vin×(Vin-Vout)/Rs)-(Vout×Iout)
スイッチングレギュレータ
理論的には効率100%ですが、比較のために電力効率をEfとします。
Vin×Iin×Ef=Vout×Iout、 Vin×Iin=Vout×Iout/Ef、 Iin=(Vout×Iout/Ef)/Vin
Pd=(Vin×Iin)-(Vout×Iout)=(Vout×Iout/Ef)-(Vout×Iout)=(Vout×Iout)×((1-Ef)/Ef)
今回の一言
次回も引き続き、シリーズレギュレータ、シャントレギュレータ、スイッチングレギュレータを比較していきたいと思います。