
電気電子回路における電源回路の基礎 -電源IC(2)-
①はじめに
引き続き、シリーズレギュレータ、シャントレギュレータ、スイッチングレギュレータの比較をしていきます。前回、入出力関係、電力損失についての原理的な関係式を示しましたが、それらの関係式の意味するところを理解するため、具体例での数値計算をしてみます。数値で比較することで感触が得られるのではないか、と思います。
具体例としては、入力電圧Vin=12V、出力電圧Vout=5V、最大出力電流IoutMax=100mAのレギュレータを想定することにしましょう。
②電源IC
入力電流、電力損失の計算
前回同様、入力電圧をVin、出力電圧をVout、入力電流をIin、負荷電流(出力電流)をIout、電力損失をPdとし、IC内部のコントロール回路の消費電流は、無視します。
シリーズレギュレータ
入力電流は、Iin=Ioutですから、負荷電流(出力電流)と等しくなります。具体例の最大出力電流100mA時には、100mAとなります。
電力損失は、Pd=(Vin-Vout)×Iout=(12V-5V)×Iout=7V×Ioutですから、負荷電流に比例し、最大出力電流100mA時に電力損失も最大となり、7V×100mA=0.7Wとなります。
シャントレギュレータ
直列抵抗Rsを設定します。シャントレギュレータは、ツェナーダイオード特性をICにより実現したものですから、抵抗値の計算は、ツェナーダイオードと同じです。Rs=(Vin-Vout)/IoutMax=(12V-5V)/100mA=70Ωとなります。
入力電流は、Iin=(Vin-Vout)/Rsですが、Rsの計算式を代入すると、Iin= IoutMaxとなり、最大出力電流100mAに等しい一定値です。
電力損失の式をIoutMax を使った式に書き換えて、数値を代入すると、Pd=(Vin×IoutMax)-(Vout×Iout)=(12V×100mA)-(5V×Iout)=1.2W-(5V×Iout)となります。従って、負荷電流が小さいほど電力損失は大きくなり、最大電力損失は、Iout=0のとき、1.2Wとなります。
上記の最大電力損失は、Rsの電力損失とシャントレギュレータICの電力損失を合計したものです。これを別々に計算します。
Rsでの電力損失は、(Vin-Vout)×IoutMax=(12V-5V)×100mA=0.7W、シャントレギュレータICの電力損失は、Vout×IoutMax=5V×100mA=0.5Wとなります。
スイッチングレギュレータ
具体例の電力効率をEf=0.8(80%)として計算します。
入力電流は、Iin=(Vout×Iout/Ef)/Vin=(5V×Iout/0.8)/12Vとなり、負荷電流に比例します。最大出力電流100mA時、(5V×IoutMax/0.8)/12V=(5V×100mA/0.8)/12V=52 mAとなります。
電力損失は、Pd=(Vout×Iout)×((1-Ef)/Ef)=(5V×Iout)?((1-0.8)/0.8)=(5V×Iout)?0.25となり、負荷電流に比例し、最大出力電流100mA時、(5V×IoutMax)×0.25=(5V×100mA)×0.25=0.125Wです。
今回の一言
次回は、入力電圧変動に対する振る舞い等について調べてみたいと思います。