
電気電子回路における電源回路の基礎 -ツェナーダイオード+トランジスタ(9)-
①はじめに
現在、個別半導体の主流は、MOSFETになりつつあるようです。バイポーラトランジスタは、品種も少なくなり、希望する特性のトランジスタが生産中止、代替品もない、といった入手困難な状況もあるようです。
MOSFETは、新製品も多いのですが、スイッチング用途がほとんどのようで、アナログ用途は、極めて希ではないかと思います。
そこで、スイッチング用MOSFETを使って電源回路を作り、シミュレーションしてみましたので、結果を報告します。
②ツェナーダイオード+トランジスタ
MOSFETソースフォロア
シミュレーション
これまで、ツェナーダイオード+エミッタフォロアを基本回路として、それを発展させた電源回路を構成し、特性等を調べてきましたので、エミッタフォロアをMOSFETソースフォロアで置き換えた回路とすることにします。シミュレーションファイル「MOSFET_ソースフォロア.asc」を参照してください。
ソースフォロア回路単体の入出力特性を調べてみました。使っているMOSFETは、60V、2A、2.5V駆動タイプと、60V、2A、4V駆動タイプの2種類です。ソース抵抗(負荷抵抗)は100Ω、ドレイン電圧12V、入力(ゲート電圧)は0~10Vとしています。
ゲート・ソース間電圧は、2.5V駆動タイプで1.2Vほど、4V駆動タイプで2Vほどになっています。ソース電流が小さい範囲(100mA未満)であれば、そこそこの特性を示すようです。
ツェナーダイオード+MOSFET電源回路
シミュレーションファイル「ZD+FET_負荷変動特性.asc」を参照してください。
これまでに解説してきた電源回路の制御トランジスタをMOSFETに置き換えた回路を収めています。MOSFETは、2.5V駆動タイプを使っています。
ただし、PNPとNPNのエミッタフォロアを2段縦続して、VBE補正する回路は、同じ構成を使えないため、MOSFETを2端子接続したものをツェナーダイオードと直列に接続してゲート・ソース間電圧を補正する回路としています。この回路は、「トランジスタのダイオード接続から類推してやってみたところ、うまくいった」シロモノです。シミュレーションファイル「MOSFET_2端子接続.asc」を参照してください。
トランジスタのダイオード接続と似たような特性とみて良さそうです。なお、この方式については、動作原理も不明ですので、動作を保証できるものではありません。
4種の回路ともに、バイポーラトランジスタと遜色の無い負荷変動特性となっています。とくに、帰還制御ありの回路では、MOSFETのゲート・ソース間電圧を気にしなくて良いので、実用性もあるのではないかと思われます。
シミュレーションファイル「ZD+FET_負荷変動特性_2.asc」を参照してください。
こちらは、MOSFETを4V駆動タイプとした回路を収めています。ツェナーダイオード+ソースフォロア構成の基本回路では、ゲート・ソース間電圧の違いのため、出力電圧値が異なっていますが、それ以外の特性は、2.5V駆動タイプを使った回路と全く同じと見て良いでしょう。
今回の一言
【注意喚起】
私は、スイッチング用MOSFETをアナログ用途に使った経験はありません。今回、シミュレーション上では、うまく動作しましたが、これは「使える可能性を示唆している」と考えるべきです。1個作り品ならまだしも、量産品に採用するには、相当な検討、試作、試験が必要でしょう。
次回からは、電源ICを概観していきたいと思います。