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電源部品選定の基礎知識~技術者と調達担当が共有すべき視点~

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電源部品選定の基礎知識~技術者と調達担当が共有すべき視点~

電源の部品選定で「この部品、本当にこれでいいのかな?」と迷ったことはありませんか?

ICやコンデンサはもちろん、トランスやコネクタ、保護素子の細部に至るまで、電源の部品選定は本当に悩ましい作業です。

この記事では、電源に関わる主要部品の選定ポイントを実務に役立つ視点でわかりやすく整理しました。
設計に取り組む方も、調達に関わる方も、ぜひお役立てください。

1.電源の部品選定ポイント

電源IC(制御IC・レギュレータ)

電源ICは電源回路の中核を担う重要部品です。
出力電圧・電流だけでなく、制御方式や外付け部品構成、EMI対策、実装性などを総合的に考慮して選定する必要があります。近年は低スタンバイ電流や高効率、小型化に対応した製品が増え、選択肢が広がる一方で、設計者には深い理解が求められます。選定の基本は、出力電圧範囲最大出力電流の確認で、安定した電力供給の可否を判断します。スイッチング周波数は、外付け部品のサイズやノイズ、効率に影響し、制御方式(電圧モード/電流モード)も負荷応答性や安定性に関わります。OCP(過電流保護)OVP(過電圧保護)OTP(過熱保護)などの保護機能の有無は信頼性と安全性に直結し、外付け回路の複雑さやコストにも影響します。さらに、推奨される外付け部品構成や動作温度範囲の確認も重要で、これらは回路の安定性や長期信頼性に関わります。
このように、電源ICの選定は単なるスペック比較ではなく、設計方針や使用環境を踏まえた戦略的判断が求められます。

 

トランス・チョークコイル

絶縁型電源では、トランスが電力の変換と電気的な絶縁の両方を担っており、その性能は巻線の構成絶縁耐圧漏れインダクタンスなどの要素によって大きく左右されます。
電源の安定性や安全性、さらにはノイズ対策にも関係してくるため、慎重な設計が求められます。
非絶縁型電源では、チョークコイルが中心的な役割を果たし、飽和電流直流抵抗(DCR)物理的サイズの選定が、回路の効率や熱設計、安定性に影響を与えます。
また、近年では、電源回路の小型化ニーズが高まっており、部品サイズ・形状や実装方式も重要な選定要素となっています。

 

コンデンサ・インダクタ・抵抗(受動部品)

受動部品は電源回路の安定性に大きく関わります。コンデンサはESR(等価直列抵抗)が高すぎると発振の原因となり、電源の動作に悪影響を及ぼします。
インダクタは飽和電流が不足すると磁気飽和によって発熱し、効率や寿命に影響します。抵抗はパルス耐性が不十分だと突入電流などで焼損する可能性があり、特にスイッチング動作の多い回路では注意が必要です。

 

コネクタ・端子台

電源ラインの接続部に使用されるコネクタや端子台は、接触抵抗が高すぎると電圧降下や発熱の原因となり、定格電流を超える使用は安全性を損なう可能性があります。
また、嵌合回数に対する耐久性が低いと、長期使用において接触不良が発生しやすくなります。
高電流用途では、接点材質の選定ロック機構の有無が重要であり、振動や衝撃に対する耐性も考慮する必要があります。

 

保護素子(ヒューズ・TVS・ESD・NTC)

保護素子は、電源設計において異常時の安全を確保するための最後の砦となる重要な部品です。
TVSダイオードやESD保護素子は、過渡的な高電圧から回路を守るために使われ、応答速度クランプ電圧最大サージ耐量サージ波形への耐性などを慎重に見極める必要があります。突入電流対策にはNTCサーミスタが有効で、電源投入時の電流を緩和する役割を果たしますが、選定には実際の波形に基づいた検証が欠かせません。
適切な保護素子の選定により、回路の安全性と長期的な信頼性を確保することができます。

 

電源設計でよくあるトラブルとその対策

これまでお客様からご相談いただいた中から、代表的なトラブルとその対策を紹介させていただきます。

 

電源ICの外付け部品が多くなり、基板サイズがオーバーする
想定以上に外付け部品が増えてしまい、基板に収まらなくなるケースです。
特にフィルタや補償回路が必要なICでは、コンデンサや抵抗が複数追加され、基板面積が圧迫されます。対策としては、初期段階で評価ボードを使って実装サイズを確認し、必要最小限の外付け部品で構成できるICを選定することが重要です。

 

トランスの耐電圧不足で絶縁破壊が起きる
絶縁型電源で、トランスの耐電圧仕様が使用環境に合っていないと、長期使用で絶縁層が劣化し、破壊に至ることがあります。
特に、医療機器や産業機器では、規格で求められる絶縁距離や耐電圧が厳しく、標準品では対応できないこともあります。使用環境に応じた絶縁規格(UL、IECなど)を確認し、必要に応じてカスタム対応二重絶縁構造の製品を選定することが求められます。

 

コンデンサのESRが高くて発振する
出力コンデンサのESR(等価直列抵抗)が高すぎると、制御ループが不安定になり、発振やノイズの原因になります。
特に電解コンデンサを使う場合、温度上昇や経年劣化でESRが増加するため、初期値だけでなく寿命末期の特性も考慮する必要があります。低ESR品(固体電解、MLCCなど)を選定し、制御ICとの相性を事前に評価することが重要です。

 

コネクタの接触不良で電源が断続的に落ちる
嵌合回数が多い用途では、接点が摩耗し、接触抵抗が増加して電圧降下や断線が発生することがあります。
特に高電流用途では、接触抵抗のわずかな変化が発熱につながり、火災リスクにもなり得ます。対策としては、金メッキ接点ラッチ付き構造のコネクタを選定し、嵌合耐久性の高い製品を使用することが推奨されます。

 

保護素子の定格不足で回路が破損する
TVSダイオードやヒューズの定格が、実際のサージ波形突入電流に対して不足していると、保護が間に合わず回路が損傷します。
特に雷サージ静電気放電など、瞬間的な高エネルギーに対しては、応答時間とピーク耐量の両方を満たす必要があります。設計段階で定格電圧最大サージ電流だけを見て選定してしまうと、実際の波形に対して不十分な保護となることがあります。実測波形に基づいた定格選定を行い、IEC規格(61000-4-2など)に準拠した試験条件で評価することが重要です。また、複数の保護素子を組み合わせて多段保護を構成することで、より広範な異常に対応する設計も可能です。

まとめ

源設計における部品選定は、単なるスペックの比較ではなく、製品の信頼性・安全性・長期供給性を左右する極めて重要な工程です。
電源IC、トランス、受動部品、コネクタ、保護素子など、すべての部品がそれぞれの役割を持ち、互いに影響し合いながら回路全体の性能を形作っています。
仕様を正しく理解し、実装環境や規格、将来的な調達リスクまでを見据えた選定を行うことで、トラブルのない安定した製品開発が可能になります。

オリナスは、部品選定サポートを通じて、設計者の皆様の負担を軽減するお手伝いをしています。
部品選定でお悩みの事がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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