
電気・電子回路における電源回路の基礎 -ツェナーダイオード+トランジスタ(1)-
①はじめに
ツェナーダイオードと抵抗1本を使った定電圧電源回路は、もっともシンプルですが、回路特性、適用範囲が限られています。これは、ツェナーダイオードの特性をそのまま利用して、基準電圧発生と出力電圧制御をおこなっているためですから、同じ定格のツェナーダイオードを使う以上、改善方法はありません。
そこで、出力電圧制御素子として、トランジスタを追加することで、回路特性の改善、適用範囲の拡大を実現してみようと思います。
※重要な注意事項※
今回のシミュレーション回路で使用しているトランジスタは、パワートランジスタではありませんので、このままの型番、回路定数で実機を製作した場合、トランジスタが破損すると思います。シミュレーション回路は、「回路動作の解説、理解」を目的としたものであって、実機の製作を考慮していません。実機に応用する際には、電力用の適切なトランジスタを選択してください。
②ツェナーダイオード+トランジスタ
シリーズタイプ基本回路
シミュレーション
シミュレーションファイル「ツェナーDi+Tr_基本回路.asc」を参照してください。
ツェナーダイオードと抵抗の回路にNPNトランジスタを追加して、シリーズタイプのリニアレギュレータを構成した回路を収めてあります。この基本回路は、どこかで見たことがあると思います。
回路動作を理解しやすいように、全く同じ回路を書き換えた回路も収めてあります。これを見ると、ツェナーダイオード回路で発生させた基準電圧をトランジスタのエミッタフォロア回路に入力していることが見て取れると思います。エミッタフォロアの入力電圧(ベース電圧)が一定ですから、出力も(トランジスタのVBE電圧分のシフトはありますが)一定電圧となります。
ツェナーダイオードを使わずに、入力の分圧電圧を基準電圧とした回路も収めてあります。入力電源が既に安定化されていて、基準電圧として問題ないレベルであれば、実用的な回路です。
シャントタイプ基本回路
上記の考え方は「基準電圧+エミッタフォロア=リニアレギュレータ」と言うことですから、NPNトランジスタの代わりにPNPトランジスタを使ってエミッタフォロアを構成するとどうなるでしょうか。
シミュレーション
シミュレーションファイル「ツェナーDi+Tr_シャントタイプ回路.asc」を参照してください。
シャントタイプのリニアレギュレータ回路が構成されています。なお、シャントタイプについては、回路例を示すに留めて、これ以上の追求はしないことにします。
入力変動特性
シミュレーション
シミュレーションファイル「ツェナーDi+Tr_入力変動特性例.asc」を参照してください。
入力電圧Vinを0~24Vまで変化させています。ツェナーダイオード回路で発生させた基準電圧が一定となっている領域では、出力Vout=ツェナー電圧-VBEとなっています。負荷抵抗を100Ωとしており、出力電流は、約55mA流しています。
負荷変動特性
シミュレーション
シミュレーションファイル「ツェナーDi+Tr_負荷変動特性例.asc」を参照してください。。
負荷電流を0~100mAまで変化させています。入力電圧Vinは12V固定です。負荷電流が増大するにつれて、VBEが大きくなり、出力電圧の低下が見られます。これは、トランジスタのVBEとエミッタ電流(コレクタ電流)との基本的関係ですので、トランジスタによる出力電流増大の代償と言えるでしょう。
今回のまとめ
次回以降、今回の基本回路から発展させて、特性改善、適用範囲の拡大を試みる予定です。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。

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