
ハンディターミナルはコードの読み取り・データ入力・無線通信などを行う携帯型業務端末です。
物流・製造・小売・医療などの現場で、業務効率化と情報管理を支える重要なツールとして広く利用されています。
本コラムではハンディターミナル市場の最新動向や部品選定のポイントを解説します。
ハンディターミナルの分類
ハンディターミナルは、用途や機能、形状に応じていくつかのタイプに分類されます。
形状による分類では、スタンダードな「キーボード搭載タイプ」と、物理キーの無い「スマートフォンタイプ」「タブレットタイプ」に大別されます。また、「ガングリップタイプ」や「ウェアラブルタイプ」のような派生形やオプションアクセサリがあります。その他、プリンタ搭載機種など様々なタイプが存在します。それぞれの形状には業務に適した特徴があり、用途に応じた選択が重要です。
読み取り方式による分類では、レーザーを使用した1次元バーコード専用機、CCDやCMOSを使用した2次元コード対応機、バーコードを使用せず複数同時読み取りが可能なRFID対応機などあります。近年は各方式を統合したマルチスキャン対応機の普及が進んでいます。
ハンディターミナルの市場・技術トレンド
成長分野と用途拡大
ハンディターミナル市場は、物流・倉庫管理、小売業、製造業、医療・介護といった分野で特に成長が見込まれています。EC市場の拡大に伴い、ピッキングや棚卸しの自動化ニーズが高まり、小売業では在庫管理やセルフレジ対応など、現場の省人化を支援する用途が増えています。製造業ではトレーサビリティや品質管理の高度化のニーズも高まっています。また、医療・介護分野でも患者情報の確認や投薬管理など、安全面での活用が広がり、市場拡大が期待できる分野となっています。
地域別の需要傾向
アジアではスマート物流や製造業の自動化が進展しており、物流量が多く人件費が高騰している中国を筆頭に、人手不足が課題となっている日本でも需要拡大が見込まれます。一方、欧米市場ではセキュリティやデータ保護への関心が高く、ソフトウェアとの連携性や管理性が重視される傾向にあります。
技術トレンド
高速通信による現場でのリアルタイム性向上が求められています。また、RFID、NFC、GPSなどの複合センサの統合が進み、AI搭載により読み取り精度を向上させたモデルも登場しています。クラウドとの連携も進み、在庫や配送のリアルタイム管理が標準化されるなど、ますます進化しています。
ハンディターミナルの部品選定ポイント
電源部(キーワード:長時間駆動・急速充電・安全設計)
現場で一番求められるのは、「一日中安心して使えること」です。8〜12時間以上の連続稼働が可能なバッテリー容量を確保することや、バッテリー交換可能であることの他、急速充電やホットスワップ対応(電源を切らずにバッテリー交換が可能な機能)といった運用面の工夫も重要です。電源回路では、突入電流を抑えるためのサーミスタや、電圧の安定化に使う低ESRのコンデンサ、抵抗の温度特性など、受動部品の選定も製品の信頼性に関ります。
センサ部(キーワード:マルチセンサ・高精度)
「一発で正確に読める」ことがユーザーの作業効率を大きく左右します。バーコードやQRコードだけでなく、RFIDや温度センサなど、用途に応じて複数のセンサを組み合わせた製品も増えています。設計が複雑化する中、センサの出力を安定させるためには、ノイズ除去用のRCフィルタや、通信ラインの抵抗などの信頼性も欠かせません。
操作部(キーワード:手袋対応・誤操作防止・UX最適化)
現場では「手袋をしたままでも操作できるか」がよく聞かれるポイントです。手袋対応や水滴耐性のある静電容量式タッチパネルが定番となっています。また、誤操作防止の観点から物理キーも根強い人気があります。スイッチのチャタリング(スイッチをON/OFFした時に発生する微細な振動)による誤動作対策を施した設計や、RCフィルタ等の選定が操作感や信頼性に影響します。
制御部(キーワード:省電力CPU・セキュリティ対応)
どんなに高機能でも「アプリが遅い」「頻繁にフリーズする」というトラブルは避けなければなりません。高速データ処理や並列タスクの実行を支えるCPUやマイコンの選定、十分なメモリ容量の確保、ソフトウェア・OSを含めた最適化が重要です。また、消費電力・セキュリティ・環境性能についても注意する必要があります。
表示部(キーワード:屋外視認性・耐久性)
「屋外でもちゃんと見えるか」「落としても壊れないか」は、導入時の大きな判断材料になります。高輝度LCD(500〜1000nits)や反射防止処理、強化ガラスの採用で、視認性と耐久性を両立させることが求められます。バックライト制御やタッチパネルの駆動回路では、電流制御用の抵抗やノイズ対策用のコンデンサが多用されるため、信頼性の高い部品を選ぶことが重要です。
通信部(キーワード:5G・Wi-Fi・eSIM対応)
「どこでもつながる」「設定が簡単」は、現場での使いやすさに直結します。5GやWi-Fi、Bluetoothなどの用途に適した最新通信規格に対応していれば、リアルタイムなデータ連携もスムーズです。eSIM対応なら、SIMの差し替えなしで通信キャリアを切り替えられるので、導入や運用が楽になります。RFラインでは、マッチング抵抗や高周波用のコンデンサが通信品質を左右するため、設計段階での最適化が欠かせません。
全体設計(キーワード:耐久性、環境耐性)
ハンディターミナルは過酷な現場環境で使用されるため、防塵防水性能や落下耐性(150cm~)が求められます。また、屋外での使用はもちろん、冷凍倉庫のような特殊環境への対応ニーズもあり、動作温度範囲も選定ポイントなります。こうした仕様はコストにも大きく関わる為、想定用途に合わせて最適な部品を選択することが重要となります。
まとめ
ハンディターミナルは、業務のデジタル化と効率化を支える重要なデバイスとして、今後も需要が拡大すると予想されます。
バッテリーの持続時間、読み取り精度、操作性、通信の安定性など、ユーザーの高まる要求への対応とコストの両立が製品競争力を高めるポイントとなってきます。
製品の設計開発や部品調達でお困りの事がありましたら、是非、オリナスまでお声かけください。