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第18回:許容誤差

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第18回:許容誤差

電気、電子回路を構成している部品定数には、必ず適正な設計値がありますが、実際に製作するには、入手可能な定数値を指定しなければなりません。当たり前すぎて、お叱りを受けそうですが、この部品定数にも許容誤差が規定されていることが普通です。

回路定数の累積誤差があまりに大きくなると、回路が誤動作したり、要求仕様を満たさなくなることもありますから、ワーストケースでの誤差を見積もることは、設計者の重要な仕事の一つです。

今回は、抵抗を例に、誤差の見積もり方法について述べてみます。単純に「ワーストケース=誤差×抵抗の数」と思い込んでいると「5%抵抗10本で50%にもなるから1%を指定しなければ・・・」といった悲劇(喜劇?)を演じてしまう恐れもあります。特に、初心者の方には「目からウロコ」かもしれません。

許容誤差が10%くらいまでは、累積誤差の計算は、1次近似で行います。これは、誤差=eとして、e×eの項を無視するわけですが、10%でも1%の違いですから、見積もりとしては十分でしょう。(5%なら0.25%)

1.合成抵抗

反転アンプでは、ゲイン=帰還抵抗/入力抵抗となることは、ご存じのことでしょう。この場合、抵抗の誤差に起因するゲイン誤差は、ワーストケースで、2本の抵抗の誤差が累積して、5%の抵抗ならば10%の誤差になります。5%の抵抗を使っているゲイン10倍のアンプで9倍とか11倍になっても驚いてはいけないわけです。

2.オペアンプのゲイン

同じ許容誤差の抵抗を組み合わせて作った回路の合成抵抗の誤差は、累積することはなく、もとの許容誤差になります。5%の抵抗を直列、並列、その組み合わせで何本使っても、5%のままです。直列の場合には計算するまでもありませんが、並列は少し厄介な多項式の計算が必要です。興味のある方は、計算してみてください。計算を容易にするためのヒントを2つ示しておきます。R1とR2の並列抵抗を計算するとして、R2=R1×Aと置き換えます。分母に(1+e)の係数の形で現れる誤差を含む項は、分子・分母に(1-e)を掛けることで消去します。もちろん、e×eの項は無視します。

3.分圧回路

抵抗2本を使った分圧回路は、掃いて捨てるほど(?)よく見かける回路です。この分圧された電圧の誤差はどうなると思いますか?

分圧電圧の誤差は、分圧比によって変わり、1/2に分圧する場合が最も累積が少なくて、2本とも同じ許容誤差の抵抗ならばもとのままです。つまり、5%の抵抗を2本使っているにもかかわらず、1/2に分圧された電圧の誤差は5%で収まるのです(もとの電圧自体の誤差はないものとしての議論ですが)。

かつて、ある回路の設計を依頼された際に、分圧回路の抵抗に5%を指定したところ、依頼者から10%も狂っては問題ではないかと(些細な?)チェックを受けたことがありました。10%でも問題となるような回路ではなかったのですが、一応、計算式を示して10%にはならないことを説明しました。それでも、腑に落ちない様子でしたが・・・。 分圧比が1/2から変わるにつれて、大小どちらに変わっても、誤差は大きくなり、2本の誤差の和に近づきます。計算はそれほど複雑ではありませんので、1/2の場合だけでも確認してみることをお勧めします。

【クイズ】上記の記述のなかに間違いがあります。探してみてください。正解は、次回に発表します。

機械関係などの他分野と比べると、電気、電子関係の許容誤差は「巨大」と言わざるを得ないでしょう。機械部品の寸法が10%も狂っていては、不良品を通り越して、別部品を誤発注したようなものでしょう。 一方、生物の世界では、個体ごとのバラツキは相当なものです。精密さを必要とするのは、優れている証拠なのか、はたまた、未熟の証か・・・、結構、深遠な議論かもしれません。

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