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第78回:測定抵抗体を用いた温度測定における分解能とノイズの関係性

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第78回:測定抵抗体を用いた温度測定における分解能とノイズの関係性

測定抵抗体を用いた温度測定における分解能とノイズの関係性

前回、分解能は、ノイズ電圧で決まることを示しました。今回は、測温抵抗体を用いた温度測定を例として、分解能を検討してみます。

①サーミスタを用いた計算例

シミュレーションファイル「サーミスタ測温回路.asc」を参照してください。25℃での抵抗値が10KΩのサーミスタを使った測温回路例です。Rthはサーミスタの抵抗値、分圧抵抗Rpは10KΩとしています。このRpの値は、本来であれば、(要求される測定温度範囲に依存する)最適値を設定すべきですが、分解能の計算例を示すことが主眼ですので、簡便さ(計算の容易さ)を優先しました。

この回路で発生するノイズを計算してみましょう。ノイズの発生源は、RpとRthの熱雑音です。さらに、+5Vの基準電源のノイズも考慮すべきところですが、ここでは省略します。

RpとRthが発生するノイズをそれぞれ計算し、分圧を考慮して出力部分で合成(2乗和の平方根)すればよいのですが、この回路を出力側からみると、RpとRthは並列となっていますから、RpとRthの並列合成抵抗値で計算する方が容易です。(別々に計算して合成した場合と、並列抵抗値で計算した場合で、同じ結果となることは、簡単な計算で確かめられますので、宿題にしておきます。)

RpとRthの並列抵抗値は5KΩですから、ノイズ電圧密度は、4nVrms×√5≒9nVrms/√Hzとなります。

(1KΩで4nVrms、 https://www.olinas.co.jp/media/knowledge/a269 を参照)

温度測定ですので、帯域は10Hzとしましょう。ノイズ電圧は、9nVrms×√10≒28nVrmsとなり、さらに、実効値からpp値に換算して、28nVrms×6.6≒185nVppとなります。これで、ノイズ電圧、つまり、電圧信号としての分解能が得られました。

②白金測温抵抗体を用いた計算例

シミュレーションファイル「Pt100測温回路.asc」を参照してください。0℃で100Ωの白金測温抵抗体を使った測温回路例です。R_Pt100はPt100の抵抗値、分圧抵抗Rpは4.7KΩとして、約1mAの電流を流しています。

サーミスタ測温回路と同様な手順で計算します。RpとR_Pt100の並列抵抗値は約107Ωですから、ノイズ電圧密度は、4nVrms×√0.107≒1.31nVrms/√Hzとなります。帯域は10Hzとし、ノイズ電圧は、1.31nVrms×√10≒4.14nVrmsとなり、さらに、実効値からpp値に換算して、4.14nVrms×6.6≒27.3nVppとなります。これで、ノイズ電圧、つまり、電圧信号としての分解能が得られました。

次に、温度電圧特性を調べます。Pt100の抵抗値変化は、JISに規定があり、0℃で100Ω、100℃で138.51Ωですから、0.3851Ω/℃の抵抗変化です。分圧回路の計算は、簡単ですので、省略しますが、結果は、約0.39mV/℃となります。

温度分解能は、27.3nVpp/0.39mV=0.00007℃となります。これも、小さい値ですね。やはり、他の部分のノイズが問題となるのでしょう。

③3線式の測温抵抗体を用いた計算例

白金測温抵抗体は、主として、高精度な測定を目的とするものですから、それに見合った回路構成、部品選定が求められます。馴染みのない方のために、3線式の測温抵抗体を使った回路例を示しておきます。この接続によって、配線抵抗による誤差を小さくできるのですが、その原理を考えてみてください。さらに、この回路での分解能を計算してみてください。

次回は、時間分解能とノイズについて取り上げる予定です。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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