
電気・電子回路におけるオペアンプ回路 -出力特性-
①はじめに
オペアンプICを使った電圧増幅回路の出力特性と言えば、出力電圧、出力電流などの駆動能力を考えることが一般的ですが、ここでは、出力抵抗について取り上げてみたいと思います。
②出力特性について
反転加算アンプ
オペアンプ回路に限らず、電圧出力の回路では、出力抵抗、あるいは、内部抵抗が存在し、電源回路、バッテリ、パワーアンプなどでは、非常に重要な特性ですが、負荷が軽いアンプでは、あまり考慮されることはありません。私自身、大出力を必要としないオペアンプ回路で、出力抵抗を意識したことはありませんが、これは、「負帰還増幅回路では、ループゲインのお陰で、出力抵抗が極めて小さくなる」という事実に「安住」していたからです。
シミュレーション
負帰還アンプでの出力抵抗はどの程度になるか、まずは、様子を見てみましょう。シミュレーションファイル「非反転バッファの出力抵抗.asc」を参照してください。ゲイン1倍の非反転アンプ(バッファアンプ)の出力抵抗を調べる回路を収めています。
出力抵抗を調べるために、アンプ出力に、負荷抵抗をスイッチで断続して、無負荷状態と10KΩ負荷状態を切り替える回路を接続しています。出力抵抗のないオペアンプによるバッファアンプ、バッファアンプ+出力抵抗(100Ω)、出力抵抗(100Ω)を持つオペアンプによるバッファアンプ、の3種の回路を示しています。さらに、オープンループゲインを1000倍、100倍に変えた回路としています。バッファアンプですから、オープンループゲイン=ループゲインとなります。入力はDC1Vです。
負荷状態の変化に伴う、出力電圧の変動を見てください。バッファアンプ+出力抵抗(100Ω)に比べて、出力抵抗(100Ω)を持つオペアンプによるバッファアンプでは、出力電圧変動が極めて小さくなっています。概ね、ループゲイン1000倍では、1/1000、ループゲイン100倍では、1/100、となっていますから、出力抵抗は、「オペアンプ単体の出力抵抗のループゲイン分の一」となっているようです。
上記の結果は、概略の予想ですから、きちんと計算して確かめたいところですが、実務設計においては、出力抵抗を検討する必要がある場合というのは、かなり特殊な案件と思われますので、計算は省略させていただきます。興味がある方は、演習問題として計算してみてください。
今回のまとめ
実際のオペアンプIC単体の出力抵抗を知るには、データシートを見るしかないのですが、記載されていない場合が多いのではないかと思われます。私の知る範囲での話ですが、高速タイプのオペアンプICで、データシートに記載されている例をみると、周波数が高い領域で急激に増加する傾向があるようです。高周波を扱うオペアンプ回路では、動作に影響が出る可能性がありそうですが、前述の通り、私自身は、そのような例の経験はありませんので、これ以上の解説をすることはご容赦ください。
オペアンプ回路の出力特性で、出力抵抗より重要で、かつ、見落としがちな特性に、スルーレートがあります。この特性については、「第30回 スルーレート」を参照してください。
https://www.olinas.co.jp/media/knowledge/a265
次回は、反転アンプ、非反転アンプ以外のオペアンプ応用回路を取り上げてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。
当社が運営している、電子部品・半導体ECサイト『オリナス.ネットhttps://www.olinasnet.com』では、アナログ・デバイセズ製のオペアンプを在庫しております。各部品は小ロットからの販売はもちろん、不具合解析や環境調査も対応可能でございますので、ぜひ、こちらのサイトもご覧下さい。