
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -移相回路からの展開(2)-
①はじめに
前回に引き続いて、移相回路からの展開、応用を試みます。
②移相回路からの展開、応用
2次フィルタにする
元の移相回路は、1次のRCフィルタを使っていますが、これを2次のフィルタにしたらどうなるでしょうか。
移相回路の本質的な動作原理は、入力からローパス出力を減算してハイパス出力を得て、ローパス出力からハイパス出力を減算することでした。従って、以下の2点を調べれば、有効性が判断できることになります。
1.入力からローパス出力を減算してハイパス出力が得られるか。言い換えると、ローパス出力とハイパス出力を加算すると、フラットな特性となるか。
2.ローパス出力からハイパス出力を減算すると、振幅特性はフラットで、位相のみが変化する特性となるか。
シミュレーション
シミュレーションファイル「2次_LP_HP_出力の加減算.asc」を参照してください。2次フィルタは、第81回~第82回で取り上げた、LCフィルタの片終端タイプを使っています。終端抵抗1KΩ、1.4KΩ、2KΩの3種の回路を収めてあります。LCフィルタの定数、特性などについては、第81回~第82回を参照してください。
https://www.olinas.co.jp/media/knowledge/a214
https://www.olinas.co.jp/media/knowledge/a213
出力の特性を見ると、終端抵抗2KΩのフィルタ回路であれば、ローパス出力からハイパス出力を減算した特性は、振幅特性がフラット、かつ、位相のみが変化する特性となっています。しかし、ローパス出力とハイパス出力の加算特性は、鋭いディップが見られます。これでは、ローパス出力からハイパス出力が得られません。
そこでフィルタ回路を少し変形して試してみました。
シミュレーション
シミュレーションファイル「2次_LP_HP_出力の加減算_2.asc」を参照してください。終端抵抗2KΩを1KΩの抵抗2本に分割したフィルタ回路としています。特性を見ると、「見事に」2つの条件を満たしています。なお、この回路について、これ以上の詳しいことは調べられていません。何らかの欠陥、見落とし、あるいは、勘違いがあるかもしれませんので、動作の保証などはご容赦願います。
可変ゲインアンプ
移相回路では、オペアンプ非反転入力側にRCフィルタを配することが「肝」ですが、このコンデンサを「敢えて」抵抗に替えてしまうと、どうでしょうか。回路構成としては、差動アンプと同じになります。この抵抗2本の分圧回路を可変抵抗(ポテンショ)とすると、ゲインを可変することができます。しかも、-1倍~0~+1倍という具合に、両極性を連続可変できます。
シミュレーション
シミュレーションファイル「移相回路_オペアンプ部応用.asc」を参照してください。入力は、0V~+1V、正極側のみですが、ゲイン可変範囲が両極性となっており、出力は-1V~0V~+1Vとなっています。なお、可変抵抗値が1Ω足してあるのは、シミュレーションでは0Ωは許されないので、それを避けるためです。
この回路をもっと単純にして、-1倍と+1倍にスイッチで切り替える構成としても、オペアンプ1つで、反転アンプと非反転アンプを切り替えることができ、部品点数削減に貢献できそうです。
今回のまとめ
移相回路からの展開は、このくらいで一段落とします。結果として得られた回路の有用性はともかく、皆様が、既存回路から展開・応用をする際に、考え方の参考になれば幸いです。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。
当社が運営している、電子部品・半導体ECサイト『オリナス.ネットhttps://www.olinasnet.com』では、アナログ・デバイセズ製のオペアンプを在庫しております。各部品は小ロットからの販売はもちろん、不具合解析や環境調査も対応可能でございますので、ぜひ、こちらのサイトもご覧下さい。