
電気・電子回路におけるLCフィルタを用いたインダクタとコンデンサの関係性(1)
①はじめに
前回の最後で述べましたが、今回は、LCフィルタの「実験」をしてみたいと思います。
②実験・検証
LCローパスフィルタの基本構成では、特性インピーダンスに等しい抵抗値で両終端するのですが、この抵抗値がアンバランスであれば、特性が変わってくることは容易に想像できます。そこで、アンバランスの極限として、片終端の場合を調べてみました。
シミュレーション (基本回路)
最も簡単な、2次のLCローパスフィルタを調べてみます。シミュレーションファイル「LC_LPF_基本回路.asc」を参照してください。この回路は、以下の内容を具体化したものです。
1.LC共振周波数は、f=1/2π√(LC)。-3dB遮断周波数との関係は、はっきりしない。
2.LCフィルタは、特性インピーダンスZ=√(L/C)で終端する。
3.LCフィルタの入出力を逆にしても同じ特性になる。
インダクタ1.6mHとコンデンサ1600pFでf=100KHz、特性インピーダンスZ=√(1.6mH/1600pF)=1KΩとなりますので、信号源出力抵抗Roと終端負荷抵抗RLをともに1KΩにしています。また、比較のために、fc=100KHzのRCフィルタ回路も収めてあります。
なお、両終端となっているため、通過帯域での出力レベルは入力の半分になりますので、入力信号源の出力レベルは2Vにして、出力1V(0dB)となるようにしています。RCフィルタは、通過帯域での減衰がありませんから、1Vの入力レベルです。
LC_LPF_Out_1の周波数特性を見てください。きれいなローパス特性です。次に、LC_LPF_Out_2と比較して、全く同一の特性になっていることを確認してください。入出力が非対称な回路の入出力端を入れ替えても同じ特性が得られるとは、驚きです。きちんとした計算をすれば、証明できるのでしょうが、直感的には理解し難い現象です。
100KHzでの減衰量を見てください。-1dBほどですから、明らかに-3dB遮断周波数ではないようです。グラフから-3dBの周波数を読むと、140KHzあたりとなっています。1.4倍ですので、√2ではないか、と推察しました。きちんとした計算は省略して、-3dB遮断周波数fc=100KHzとするために、共振周波数を70KHz=100KHz/1.4としてみました。
シミュレーション (遮断周波数調整)
シミュレーションファイル「LC_LPF_遮断周波数調整.asc」を参照してください。インダクタを2倍の3.2mHとし、コンデンサは同じ1600pFで、共振周波数を70KHzにした回路と、インダクタはそのままで、コンデンサを2倍とした回路を示しています。特性インピーダンスは、それぞれ、1.4KΩ、700Ωになりますから、出力抵抗、終端負荷抵抗も変更しています。この変更によって、-3dB遮断周波数が100KHzとなっていることを確認してください。
シミュレーション (終端抵抗による特性変化)
特性インピーダンスで終端することの効果(?)を見るために、特性インピーダンスと異なる抵抗値で終端した場合の周波数特性の変化を調べてみました。シミュレーションファイル「LC_LPF_終端抵抗による特性変化.asc」を参照してください。
終端抵抗値を2倍ステップで1/16から16倍にした回路を収めてあります。確かに、「遮断のきれ」が悪くなっていますが、位相変化も緩やかになってきますから、「まったく無用」の特性とも言えないでしょう。
また、ここで分かることは、終端抵抗値が1/2の回路と、2倍の回路の特性が「全く同一」になっていることです。1/4の回路と4倍の回路、・・・、1/16の回路と16倍の回路、それぞれのペアが同じ特性となっていることも確認してください。
今回のまとめ
LCフィルタは、なにかと面白そうですので、次回も引き続き、LCフィルタの「実験」をしてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。