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第82回:電気・電子回路におけるLCフィルタを用いたインダクタとコンデンサの関係性(2)

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第82回:電気・電子回路におけるLCフィルタを用いたインダクタとコンデンサの関係性(2)

電気・電子回路におけるLCフィルタを用いたインダクタとコンデンサの関係性(2)

①はじめに

前回、2次のLCローパスフィルタを構成し、その特性を調べました。その中で、終端抵抗値を変化させると、興味深い特性変化が生じることを「発見」しました。そこで今回は、終端抵抗について、さらに追求してみたいと思います。

②実験・検証

LCローパスフィルタの基本構成では、特性インピーダンスに等しい抵抗値で両終端するのですが、この抵抗値がアンバランスであれば、特性が変わってくることは容易に想像できます。そこで、アンバランスの極限として、片終端の場合を調べてみました。

シミュレーション (入力側片終端)

シミュレーションファイル「LC_LPF_入力側片終端_特性.asc」を参照してください。基本となる素子は、前回と比較するため、同じ定数(L=1.6mH、C=1600pF、f=100KHz、Z=1KΩ)としています。

負荷側の終端抵抗は取り除き(高インピーダンス、開放端)、入力側の終端抵抗値を、1KΩを基準に2倍ステップで1/8から8倍にした回路と、1/1.4、1.4倍とした回路を収めてあります。初めは、2倍ステップの回路だけで調べましたが、両終端と同じ「平坦な特性」を実現するには、より細かい抵抗値の調整が必要であることが判明したため、1/1.4、1.4倍を追加しました(1.4≒√2)。なお、片終端では、通過帯域での減衰はありませんから、入力信号源の出力レベルは1Vとしています。

これらの回路の特性をみると、特性インピーダンス1KΩで入力側を片終端した回路では、f=100KHzで、減衰無し(0dB)ですが、100KHzの少し手前でゲイン増大がみられます。

抵抗値を小さくして行くと、ゲイン増大の傾向が大きくなり、かつ、ゲインピークとなる周波数が100KHzに近づいて行きます。逆に、抵抗値を大きくして行くと、ゲイン増大が無くなって、なだらかな減衰となります。抵抗値が特性インピーダンスの1.4倍の回路で、丁度よい「平坦な特性」となり、100KHzでの減衰量は-3dBとなっており、両終端の場合とは異なり、共振周波数と-3dB遮断周波数が一致するようです。以上の結論は、シミュレーションのグラフから読み取ったものであり、計算の裏付けは取っていませんが、実用上、十分な情報でしょう。余裕のある方は、計算で証明してみてください。

シミュレーション (負荷側片終端)

シミュレーションファイル「LC_LPF_負荷側片終端_特性.asc」を参照してください。こちらは、入力側の終端抵抗を取り除き、負荷側終端抵抗のみとした回路です。

入力側片終端と同じ特性となっていることが確認できます。ただし、抵抗値の増減に対する特性変化の方向が逆となっています。すなわち、抵抗値を小さくすると、なだらかな減衰となり、大きくするとゲインピークが増大します。丁度、1/1.4と1.4倍、・・・、1/8と8倍、が入れ替わった特性のようです。したがって、1/1.4の抵抗値で「平坦な特性」となっています。

シミュレーション (LPF+HPF)

ローパスフィルタとハイパスフィルタを組み合わせたら、どんな特性になるでしょうか。そこで、シミュレーションファイル「LC_LPF+HPF_特性.asc」を作成してみました。同じfc(100KHz)のLPFとHPFを直列、並列に接続してあります。接続には、電圧制御電圧源を介することで、正確な特性合成(乗算、加算)をしています。実用的回路ではありませんが、意外な結果が見られますので、思考実験として楽しんでみてください。

今回のまとめ

さて、両終端となっている基本回路は、LC部分の入出力端を入れ替えても、同じ特性となります。しかし、片終端の場合には、入力側をインダクタとしなければなりません。コンデンサ入力型を片終端すると、「2次」ではなく、「1次」のRCフィルタ、もしくは、LRフィルタとなってしまいます。

これは、インダクタ、コンデンサの動作を考えれば、理解できます。入力側を終端し、負荷側を開放(高インピーダンス)とすると、出力に直列となっているインダクタには電流が流れません。つまり、インダクタとしての機能が「失われて」しまいます。また、入力側の抵抗を取り除き、負荷側で片終端すると、コンデンサが入力電圧源と並列になるため、コンデンサ両端の電圧は入力電圧そのものとなり、コンデンサの機能が「失われて」しまいます。

シミュレーションファイル「LC_LPF_コンデンサ入力型_片終端_特性.asc」には、動作の比較、確認ができる回路を収めてありますので、確認してみてください。

次回は、ステップ応答、HPFなど、これまでに得られた結果の発展、応用を予定しています。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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