
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -レベルシフト(4)-
目次
①はじめに
今回は、入力信号のDCオフセットと出力信号のDCオフセットが同じ2.5Vの場合を調べてみます。
これまでと同様に、5V単電源オペアンプ回路(反転アンプ、または、非反転アンプ)で±0.1V を±1V に10倍増幅する設定で考えます。
②レベルシフトの具体例
反転アンプ、入力2.5V±0.1V、出力2.5V±1V
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_反転_入力2.5V±0.1V.asc」を参照してください。
入力DCオフセット2.5Vが反転10倍されますから、反転アンプ基本回路のままでは、出力は-25V±1Vとなっています。
出力DCオフセットを-25Vから2.5Vに「持ち上げる」ために、27.5V/11=2.5Vの電圧をオペアンプの+入力端に印加します。この電圧値は、入出力のDCオフセットに等しくなっていますが、これは偶然ではありません。
第109回で示した一般式を使って確認してみます。
https://www.olinas.co.jp/media/knowledge/a185
反転ゲインをG、入力オフセット電圧をVINofs、出力オフセット電圧をVOUTofs、+入力端に印可する電圧をVsftとして、
Vsft=(VINofs×G+VOUTofs)/(G+1)
今回の場合、入出力ともに同じDCオフセットVofs ですから、VINofs=VOUTofs¬=Vofs、これを代入すると、
Vsft=(Vofs×G+Vofs)/(G+1)={Vofs×(G+1)}/(G+1)=Vofs
となり、ゲインに関係なく、入出力DCオフセットと等しい電圧値を印加すればよいことが判ります。
差動アンプ構成でレベルシフトする回路も収めてありますが、その特長(入力DCオフセット、アンプゲイン、出力DCオフセットを独立に設定可能)は、今回の条件では意味が無くなっています。
非反転アンプ、入力2.5V±0.1V、出力2.5V±1V
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_非反転_入力2.5V±0.1V.asc」を参照してください。
入力DCオフセット2.5Vが10倍されますから、非反転アンプ基本回路のままでは、出力は25V±1Vとなっています。
出力DCオフセットを25Vから2.5Vに「引き下げる」ために、-入力側に22.5V/9=2.5Vを印加します。この電圧値は、入出力のDCオフセットに等しくなっていますが、これも偶然ではありません。
式で確認してみます。ゲインをG、入力オフセット電圧をVINofs、出力オフセット電圧をVOUTofs、-入力側に印可する電圧をVsftとして、一般式は、以下となります。
Vsft=(VINofs×G-VOUTofs)/(G-1)
前項同様、入出力DCオフセットVofsとして、VINofs=VOUTofs¬=Vofs、これを代入すると、
Vsft=(Vofs×G-Vofs)/(G-1)={Vofs×(G-1)}/(G-1)=Vofs
となり、ゲインに関係なく、入出力DCオフセットと等しい電圧値となります。
前項と同様に、差動アンプ構成によるレベルシフト回路を収めてありますが、有用であるとは思えません。反転とするか非反転とするか、はっきりしていない段階での試作などで、反転非反転兼用のアンプを作る場合には、便利な回路かもしれません。
今回のまとめ
入出力のDCオフセットが同じ場合には、反転アンプ、非反転アンプともに、簡潔な回路となりました。これらは、単電源アンプ回路を多段接続する場合に適用できます。
尚、信号グランド(あるいは、仮想グランド)という考え方を導入すれば、見通しがよくなるのですが、これについては、別の機会に取り上げてみたいと思います。
次回は、電源範囲に比べて大きなDCオフセットの場合について取り上げてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。
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