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第6回:リーク電流

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第6回:リーク電流

日本語には、良い意味で使われることが少ない、気の毒な言葉、あるいは漢字がいくつかあります。「漏れ」という言葉もその類のようです。機密漏洩、水漏れ、漏電、お漏らし、など、ろくなものがありません。

リーク電流(漏れ電流)というと、どこかに異常がある状態のように感じる方も居られるかもしれませんが、ごく普通に見られる現象です。「絶縁不良による不具合発生」は、多くの技術者を悩ませる問題の一つです。

今回、取り上げたテーマは、「不良ではない部品」のリーク電流に関するものです。

1.アンプ試作での失敗事例

入力インピーダンス1MΩ、ゲイン100~1000倍、周波数特性DC~1KHz、出力2.5V±1V、5V単電源のアンプの試作です。入力信号は数mVですから、オペアンプにはゼロドリフト、またはオートゼロと呼ばれるタイプを使いました。CMOSタイプのオペアンプですので、バイアス電流は問題になりません。

製作完了後、動作確認をしたところ、大きなオフセットが発生していました。出力のオフセットを決めている抵抗の定数を間違えたものと思いましたが、そうではありませんでした。

2.原因

試作機の製作に取り掛かった後に、入力保護回路を忘れていることに気付き、「当たり前に」ダイオードを追加していました。汎用のスイッチングダイオードを入力とグランド間、および、入力と+5V電源間に接続する定番の保護回路です。急に思い立って、あまり考えもせず、「当たり前に」なにかをする・・・、思い当たるフシはありませんか・・・、大抵は、まぬけな結果になるものです。

現実のダイオードは、理想ダイオードではありません。当然、逆電流が流れますし、汎用のダイオードでは、少なくとも数nA程度は流れると考えなければなりません。条件によっては、1μAまで見込む必要があるでしょう。1MΩの抵抗に1nAの電流が流れれば1mVですから、オフセットどころか、信号と同じレベルです。

3.対策

このような微小電圧、かつ、高インピーダンス回路での「定番」である、JFETのダイオード接続に変更しました。JFETのダイオード接続による保護回路は、以前にも何回か使った経験がありましたので、かなり落ち込みました。

低リーク電流のダイオードとしては、トランジスタのベース・コレクタ間のダイオードもありますが、こちらの方は、実際の使用例を見たことがありませんし、私自身も使ったことがありません。個人的には、JFETのダイオード接続の方に安心感を持っています。JFETのゲート部分のPN接合は、逆バイアスで使うことが前提ですし、ゲートリーク電流が小さいことはJFETの性能指標のひとつだからです。

4.コンデンサのリーク電流

リーク電流を考慮すべき部品として、コンデンサについても考えてみましょう。コンデンサの場合は、絶縁抵抗が規定されていることが多いようですので、例として、絶縁抵抗1000MΩ以上のコンデンサとします。このコンデンサに1Vの電圧が印加されると、最大1nAの電流が流れる可能性があることになります。上述のアンプ試作の失敗例と同じ大きさのリーク電流です。

実際にコンデンサのリーク電流によると思われる現象の経験があります。高誘電率系のチップセラミックコンデンサをDCカットのための結合コンデンサとして使った微小信号回路です。本来、こういった用途には高品質のフィルムコンデンサなどを使わなければならないところですが、実装面積の関係で試してみたのです。

案の定、リーク電流のゆらぎが原因らしい出力のふらつきが見られました。誘電体の種類が異なるサイズの大きなチップコンデンサに変えたところ、一応、安定動作させることができたのですが、不確定要素が多過ぎて、採用には踏み切れませんでした。

「絶縁抵抗1000MΩは絶縁とは言えない」場合があることは、覚えておいて損は無いと思います。少なくとも、薀蓄を語る際のネタにはなりますから。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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