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第9回:昇圧DC/DCコンバータ  -その2-

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第9回:昇圧DC/DCコンバータ  -その2-

前回に続き、昇圧DC/DCコンバータの基礎について取り上げます。まず、前回の内容を簡単に要約しておきます。

前回のおさらい

1.昇圧比

昇圧比は、デューティーサイクルのみで決まる。

昇圧比=(ON時間+OFF時間)/OFF時間=100/(100-D)

Dはデューティーサイクルで、ON時間とスイッチング周期との比率(%)。

2.インダクタ電流

インダクタに流れる平均電流は、以下のようになる。

平均インダクタ電流=出力電流×昇圧比=入力電流

インダクタ電流の三角波成分(リップル電流)は、インダクタ値に反比例、入力電圧に比例、デューティーサイクルに比例、スイッチング周波数に反比例し、出力電流には関係しない。

【注記】インダクタ電流は連続的に流れていることが前提となっています。下記の項目についても同様です。

今回の内容

実用的な電源回路を構成するためには、フィードバック回路によって、出力電圧を安定化する必要があります。このフィードバック回路については、内容が煩雑、かつ、個別的ですので、取り上げる予定はありませんが、コンバータ回路の「裸」の過渡応答を調べてみました。さらに、発展応用の一例として、高昇圧比を実現する回路のアイデアを紹介したいと思います。

3.過渡応答

昇圧比は、デューティーサイクルで決まっているわけですから、入力電圧が一定であれば、負荷電流が変動しても、定常的には、出力電圧は変化しません。しかしながら、過渡的には、リンギングが発生します。

これは、インダクタと出力コンデンサで構成されるLC共振回路に誘起される減衰振動です。面白いことに、この振動周波数は、デューティーサイクルで変化します。トランジスタスイッチがONしている期間は、ダイオードがOFFしていますので、共振回路の状態が保存されるためです。つまり、インダクタの電流、および、コンデンサの電圧が、サンプルホールドされている、と考えられます。実は、共振周波数がスイッチングによって変化する現象は、初めて気が付いたのですが、なにかに応用できるかもしれません。

入力電圧が変動すれば、当然のことながら、出力電圧は定常的にも変動します。この場合でも、過渡応答は、負荷変動時と同様です。

4.高昇圧比の実現

デューティーサイクルを99%にすれば、100倍の昇圧比となるはずですが、実現は無理でしょう。100倍は大げさですが、10倍以上の昇圧比にしたい場合もあると思います。

あくまでもアイデアですが、倍圧、あるいは、N倍圧にする回路があります。倍圧整流回路、あるいは、ブースト回路としてご存知の方も居られると思いますが、それらと同じ動作原理の回路です。シミュレーションファイルを参照してください。十分な検討、試作評価を行えば、実用になるのではないか、と思います。

DC/DCコンバータには、昇圧のほかに、降圧、昇降圧、反転がありますが、これらについても、順次取り上げる予定です。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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