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第16回:反転DC/DCコンバータ -その1-

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第16回:反転DC/DCコンバータ -その1-

DC/DCコンバータの基礎シリーズ、第四章として、反転コンバータを2回に分けて取り上げます。

かつて、オペアンプを使ったアナログ回路では、±15Vの両電源が「あたりまえ」でしたが、入手可能な単電源オペアンプの種類が豊富になり、また、その性能も向上したことにより、単電源のアナログ回路が「あたりまえ」になりつつあります。さらに、AD/DAコンバータなどの普及で、アナログ・デジタル混在回路が「あたりまえ」となり、電源の「単電源化」は、ますます加速される傾向にあるようです。実際、電源回路が単純になるだけでなく、電源供給のための配線本数も減ることによるコストダウンはバカになりません。しかしながら、依然として負電源が必須、もしくは、望ましい回路も存在します。このような場合、電源部からの供給は単電源とし、必要な負電源を「オンボード」で生成するのが最近の手法のようです。必然的に反転コンバータの出番となります。

反転コンバータの回路方式には、負電圧出力チャージポンプ回路や、ハイサイドスイッチとインダクタ、ダイオードを組み合わせた回路などもありますが、今回、取り上げるのは、ローサイドスイッチと2つのインダクタ、結合コンデンサ、ダイオードで構成される回路です。出力電圧(の絶対値)を入力電圧と等しくすることも、高く、あるいは、低くすることもでき、反転昇降圧コンバータとでも呼ぶべき回路です。

付属のシミュレーション回路をご覧ください。昇降圧コンバータとして取り上げた、SEPIC回路によく似ていることに気付かれることと思いますが、動作原理を理解する上では、SEPIC回路の動作は忘れた方がよいでしょう。この反転コンバータの動作は、昇圧DC/DC+負出力チャージポンプ+降圧DC/DC(ローパスフィルタ)と考えるとよいと思います。1つのFETスイッチが、昇圧のためのスイッチと、昇圧された電圧で充電されたコンデンサを逆電圧になる方向に切り替えるスイッチを兼ねているところが「ミソ」です。

1.反転昇降圧比

出力電圧の絶対値と入力電圧との比、反転昇降圧比=出力電圧の絶対値/入力電圧、を決めているのは、スイッチングのON時間とスイッチング周期との比率、デューティーサイクルだけです。スイッチング周波数、インダクタ値、負荷電流には関係ありません。

反転昇降圧比=(ON時間)/(OFF時間)=D/(100-D)

ここで、DはデューティーサイクルでON時間とスイッチング周期との比率(%)です。ダイオードの順方向電圧降下などは無視しており、インダクタ電流は連続的に流れている、としての話です。出力の極性は反転していますが、SEPIC回路と同じ式になっています。この式は、上述の動作原理から考えて、次のように導くことができます。

反転昇降圧比=昇圧比×降圧比=(100/(100-D))×(D/100)=D/(100-D)

DC/DCコンバータICを使う場合に、希望する反転昇降圧比が得られるかどうかは、動作可能なデューティーサイクルの範囲によります。

スイッチングトランジスタの耐圧、電流については、SEPIC回路と同じ注意が必要です。スイッチングトランジスタがOFFの時には、「入力電圧+出力電圧の絶対値」の電圧が発生します。ONの時には、2個のインダクタ電流の合計電流が流れます。

次回の続編では、以下の項目を掲載予定です。

2.インダクタ電流

3.過渡応答

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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