1. HOME
  2. お役立ち情報
  3. 電子回路技術情報よもやま塾
  4. 第36回:フォトダイオードプリアンプ(4) -ノイズ-

第36回:フォトダイオードプリアンプ(4) -ノイズ-

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
第36回:フォトダイオードプリアンプ(4) -ノイズ-

オペアンプによるIV変換回路は、オペアンプと帰還抵抗Rf、および、帰還コンデンサCfの3つの部品で構成されている、見かけ上、極めて単純な回路です。しかしながら、回路設計となると、一筋縄ではいきません。Rf、Cfの値を変えたり、特性の異なるオペアンプに変更した時、回路特性の変化を「感覚的に把握しづらい」ものです。これは、回路図には明示されていない、PDの端子間容量などの反転入力容量やオペアンプのオープンループゲイン特性が、決定的に回路特性を支配しているからです。

あまり深く考えることなく回路定数を変えるとどのような特性変化があるか、デモ用のシミュレーションを用意しました。「IV変換_Cfによる特性変化」、「IV変換_Rfによる特性変化」、「IV変換_fc一定での特性変化」を見てください。シミュレーション回路図の中央にある、Rf=1MΩ、Cf=2pF(fc=80KHz)の回路は、PD端子間容量(100pF)、使われているオペアンプ(利得帯域幅積GBP=15MHz、入力端子容量4pF)に対して妥当な設計例です。AC解析の時は、左上のOpen_Loop_Gainと各回路例のNoise_Gain_x、IV_Conv_Out_xを同時に表示して比較してください。

次に、「IV変換_各Rfでの適切なCf」、「IV変換_各fcでの適切なRfCf」を見てください。きちんと設計すれば、適切な定数値を得ることができるのですが、「一見して納得できる」定数値とは思えないのではないでしょうか。なお、シミュレーションで使っているオペアンプは、マクロモデルの振る舞いが素直で、オペアンプの一般的な特性を代表していると考えられます。それ以外に他意はないことをご承知願います。

さて、上記のシミュレーションを見て気が付かれた方も居られることでしょうが、IV変換回路の特性を決めているのは、遮断周波数fc(=1/2πRfCf)における、ノイズゲインとオープンループゲインの関係です。

IV変換回路設計の基本関係式は、fcにおいて、ノイズゲイン≦オープンループゲインとなることです。この関係は、fcにおけるループゲイン(=オープンループゲイン/ノイズゲイン)が1以上である、と表現することもできます。

fcにおけるノイズゲイン=(Cf+Cin)/Cf

(ここで、CinはPDの端子間容量+オペアンプの反転入力端子容量+配線等の寄生容量)

fcにおけるオープンループゲイン=GBP/fc

ですから、基本関係式は、

(Cf+Cin)/Cf ≦ GBP/fc = GBP×2π×Rf×Cfとなります。

Cin>10×Cfの場合に、近似的に(Cf+Cin)/Cf ≒ Cin/Cf として、Cfについて解くと、Cf ≧ √((Cin/(GBP×2π×Rf))が得られます。(誤差はCf/Cin程度)

「IV変換_LoopGain@fcによる特性変化」には、ループゲイン(=オープンループゲイン/ノイズゲイン)が1、2、4の場合の特性を示しています。ループゲイン=1では、ステップ応答で20%弱のオーバーシュートがあり、ループゲインが大きくなるにつれて、応答は遅くなりますが、オーバーシュートは小さくなっていきます。ステップ応答に対するオーバーシュートをどの程度とすべきかは、後段での処理内容によって判断すべき事項ですので、IV変換回路単体としての「優劣」ではありません。

要求されたRfの値で計算したところ十分なfcが得られないことは、よくあることです。この場合の対策は、「GBPがより大きな(高速、広帯域)オペアンプに変更する」、「端子間容量の小さなPDに変更する」などが正攻法ですが、思うようなデバイスがあるとは限りません。仮にあったとしても「高価」あるいは「入手困難」だったり・・・。そのような時は、Rfを小さくするしかありませんが、「確かな根拠を示して」要求されたRfは「無理」と主張できます。

IV変換回路のオペアンプの入力電圧ノイズに起因する出力ノイズについて計算式を示しておきます。

Vn = Ven×√(fc×ループゲイン×1.57)

(ここで、Vnはrms出力電圧ノイズ、Venはオペアンプの入力電圧ノイズ密度)

この式は簡易計算式で、結果は大きめになりますが、検討の目安としては十分と思います。なお、後段でfc×ループゲインより低い周波数の帯域制限がある場合は、その帯域で計算します。

次回は特性改善のヒントを予定しています。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オリナスについて
もっと知りたい方はこちら

資料ダウンロードや製品・サービス内容に関するご質問やご不明な点などがありましたら、こちらよりお問い合わせください。

ご質問やお問い合わせはこちら

オリナスへのお問い合わせや、製品に関するご相談やご質問はこちらです。

お役立ち資料をダウンロード

オリナスの会社情報パンフレットや製品カタログのダウンロードはこちらです。

メルマガ登録