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第38回:多段RCフィルタ

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第38回:多段RCフィルタ

RCフィルタは、多くの回路に見受けられますし、当塾でも何度となく登場してきました。これからも定番の回路要素として、種々の回路に出没すると思います。寄生要素も考慮すれば、ほとんどの回路動作に「貢献」または「悪さ」をしています。抵抗とコンデンサ、たかだか、2個の部品ですが、回路によっては、その働きぶりに感心することすらあるものです。逆に言えば、2個の部品を「ケチった」ために、巨大なシステムが「コケる」ことも起こり得るのではないでしょうか。

RCフィルタには、ローパスタイプとハイパスタイプがあります。以下では、多くの用途で使われる、ローパスタイプを取り上げていますが、考え方は共通ですので、ハイパスタイプにも応用が可能と思います。

さて、手軽に使えるRCフィルタですが、「手軽」な分、その性能、効果に「不満」を感じることもあります。例えば、ノイズ除去が十分でなかったので、コンデンサの容量を大きくしたところ、応答が遅くなってしまったため、回路全体の特性が制限されてしまったことがありました。

RCフィルタの特性を改善する必要が生じた時に、いきなり、LCフィルタ、アクティブフィルタなどを考えがちですが、RCフィルタの多段接続も検討してみるべきです。「手軽さ」を犠牲にすることなく、「そこそこ」の高性能化が図れるものです。

今回、fc=10KHz(R=10KΩ、C=1600pF)のRCフィルタを基本構成要素として、1、2、3段構成の特性比較をするためのシミュレーション回路を用意しました。1段構成には、基本のfc=10KHzフィルタ以外に2種類ありますが、これらは、100KHzでの減衰量が2、3段構成と同じになるような定数にしてあります。

多段構成とする場合、本来の特性を維持するためには、バッファを介してRCフィルタを縦続する必要がありますが、後段の定数値を変えることで、バッファを省略することも可能です。後段のRを10倍、Cを10分の1にする(後段のインピーダンスを10倍にする)と、ほぼ「バッファあり」と同等になるようです。

実は、「後段のインピーダンスを大きくする手法」を使ったことはあるのですが、詳しく特性を調べたことはありませんでした。「10倍ならば、ほぼ同等だろう」と予想はできますが、今回、シミュレーションで確認できました。また、同じ定数値で「気軽に」縦続した回路であっても、ノイズ除去、リップル低減、平滑化(平均化)などの用途には、十分な特性改善が得られるようです。これについても、初めて、シミュレーションで確認しました。

アクティブフィルタなどと比較して、RCフィルタの特長というと、安価、簡易、低性能などを思い浮かべることが普通ですが、極めて優れた点もあります。

第一は、扱える電圧レベルが大きいことです。部品の耐圧以内であればよいわけですから、数10V程度のノイズなど、苦も無く処理してくれます。オペアンプなどの回路では、誤動作どころか、破損する可能性もあります。

第二には、極めて広帯域であることです。オペアンプを使ったアクティブフィルタの帯域は、オペアンプの帯域で制限されます。アクティブローパスフィルタにオペアンプの帯域より高い周波数が入力されると、まともに動作しません。

上記の2点を考慮すると、アクティブフィルタを使う時であっても、その前段にRCフィルタが必要かどうか、検討しなければならないでしょう。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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