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第40回:交流成分検出についての考察

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第40回:交流成分検出についての考察

前回、電源出力のリップル電圧検出についての問題を出しました。DCサーボの応用例として考えてもらうことを意図していたのですが、実は、問題自体は「単なる思い付き」であったことを白状しなければなりません。実際にこのような案件に取り組むならば、まず、ADCへの入力条件を確定し、その後、DC結合方式とAC結合方式(DCサーボを含む)の優劣を検討するでしょう。「24V電源のリップル電圧のみをマイコンで表示」というだけで、「AC結合がよい」とは判断できませんから、問題の設定が「雑」過ぎました。お詫びします。

そこで、今回は、この問題を交流成分検出の案件例として、考察してみたいと思います。条件を再掲すると、「トランスを使った非安定化24V電源のリップル(Max1Vpp、100/120Hz)のみをマイコンのADCで取り込み、Vpp値を表示、精度はラフ(10%程度)、ADCの入力レンジは0~5V、5V単電源のレールtoレールオペアンプを使用」です。あまり、現実的な設定数値ではありませんが、考え方を示すことを主眼として、このままとします。ただし、「電源出力は20~30V、ADCは分解能10ビット」を追加の条件とします。

1.ADCの入力条件

ADCの入力レンジは0~5V、分解能10ビットですから、1LSBは約5mVです。精度10%程度を考慮し、分解能は1%を出発点とします。リップル電圧は5mV ×100=0.5Vpp以上あればよいことになります。もちろん、0~5Vの範囲内になければなりません。

2.AC結合方式

AC結合とした場合には、リップル成分を取り出し、2.5Vを中心値とするようにシフトするだけで、1Vppのままでよいことになり、コンデンサ結合ならば、比較的簡単に回路構成できそうです。5V単電源で20~30Vの入力を扱うのですから、DCサーボとするには、少々、工夫が要求されますが、本案件では、DCサーボがとくに有利であるとも思えません。なお、コンデンサ結合では、入力保護に注意しなければなりません。入力には-30Vが印加される可能性があります。

しかし、AC結合では、定常状態になるまでの時間(セトリングタイム)を考慮しなければなりません。100Hzのリップルを扱うわけですから、低域遮断周波数を10Hzとして、0.1秒ほどと見積もれますが、これが問題かどうかです。

3.DC結合方式

DC結合ならばどうなるでしょうか。5V以下とするために単純に分圧するだけでは、リップル成分も分圧されてしまい、0.5Vpp以上という条件を満たしませんから、分圧、シフト、増幅を組み合わせる必要があります。

具体的な値を設定して検討してみましょう。1/10に分圧するとDC成分は20~30Vが2~3Vとなり、リップル成分は0.1Vppとなります。これをリップル0.5Vppとするためには、5倍する必要があります。DC成分を2.5Vを中心値として5倍し、2~3Vを0~5Vとする回路は構成可能ですが、これではリップル成分はADCの入力レンジに収まりません。リップル成分も含めて入力レンジ内に収めるには、ゲイン4倍、余裕を見れば3倍程度としなければなりませんが、ここで、最初に出発点とした、分解能1%を再検討することになります。「要求精度の1/6の分解能でも大差ない」と結論できるならば、DC結合でも「いける」ことになります。DC結合には、セトリングタイムの問題もありませんし、入力保護も簡単になります。

少し横道に逸れますが、マイコンを使っているのですから、DC結合でシフト電圧を切り替える方式も検討に値すると思います。分解能を確保したい、あるいは、入力電圧範囲を拡大したい、といった時に有効な手段となり得ます。

前回の出題が「おそまつ」であったため、予定外の内容となりました。重ねてお詫びします。なお、今回、検討した方式の回路例については、次回に解説する予定です。

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