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第60回:ボトムクランプ回路

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第60回:ボトムクランプ回路

前回の「オペアンプ+ダイオード」は、如何でしたでしょうか。ダイオードに馴染みのない方には、新鮮な発見を提供できたのではないかと、勝手に自負しております。

今回も、ダイオードが主役となる回路を取り上げます。ボトムクランプ回路、あるいは、直流再生回路と呼ばれる回路です。なんとも高級そうな、あるいは、複雑そうな名前ですが、基本構成は、「AC結合+ダイオード」ですから、極めて単純な回路です。

AC結合(交流結合、コンデンサ結合、直流カット)は、ご存じのことと思いますが、扱う信号が正弦波、および、その合成信号であれば、周波数特性以外、特に注意すべき点は、あまりありません。しかし、矩形波、パルス波形などを扱う場合には、「いやらしい問題」に向き合うことになります。

例えば、0V~+5Vの矩形波をAC結合すると、デューティー比によって、-1V~+4Vになったり、-4V~+1Vになったりします。デューティー比が変われば、もとの信号に含まれる直流成分が変わりますので、当然の結果なのですが、後段の処理によっては、大いに悩むことになります。

ここで、ダイオードの出番となります。シミュレーションファイル「ボトムクランプ基本回路.asc」を参照してください。Vout_0は、AC結合の出力、Vout_1は、ダイオードを一本追加した、ボトムクランプ回路の出力です。入力信号は、0V~+5Vの矩形波で、0.5秒から1秒までオン時間20%、1.5秒から2秒までオン時間80%です。ダイオードの順方向電圧(Vf)の影響はありますが、「見事に」元のレベルを再現しています。入力の最低値を一定値(この場合、Vfを無視すれば0V)に固定しています。別の見方をすると、入力の直流成分を「再生」したことになります。このような用途で使われる場合に、直流再生回路と呼ばれるわけです。

この回路の動作について、一つの考え方を示してみます。まず、入力コンデンサとダイオードでボトムホールド回路となっていることに注目します。コンデンサとダイオードが入れ替わっていますが、入力側から見れば、ダイオードとコンデンサが直列であることに変わりはありません。したがって、コンデンサ両端の電圧は、(Vfを無視すると)入力信号のボトム値に等しくなります。さて、出力側からみると、入力とボトムホールドされたコンデンサが直列となっていますから、電圧が加算されるわけですが、コンデンサ両端の電圧の極性を考えると、入力のボトム値が0Vとなるような出力電圧値となります。ゆっくり考えてみてください。入力信号のボトム値がマイナスとなる信号で考えると分かり易いと思います。

シミュレーションファイル「ボトムクランプ応用回路_1.asc」には、クランプ電圧を0V以外の値にした例を示しています。ここでは、+1Vを加えて、ダイオードのVfの影響があっても、出力が常にプラス電圧となるようにしたもので、5V単電源の(マイコン内蔵の)ADコンバータに入力することを想定したものです。なお、実際には、バッファが必要になると思います。

シミュレーションファイル「ボトムクランプ応用回路_2.asc」には、オペアンプを使って理想ダイオードを構成し、ダイオードのVfの影響をなくした回路を収めています。ただし、この回路は原理図であって、実用に耐えるものではありません。シミュレーションの出力波形を見ると、「なんとなく」動作しているようですが、小さな発振が起こっていますし、過渡応答も改善の余地がありそうです。

次回、この回路を実用的回路にすることをテーマとして取り上げたいと思います。オペアンプを使った、基本原理回路から実用的な設計とするための考え方を(多少は)示すことが出来るのではないかと思います。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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