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第62回:DC/DC初心者向け設計法の提案

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第62回:DC/DC初心者向け設計法の提案

近頃では、スイッチング方式のDC/DCコンバータは、身近なものとなっています。多くのICメーカーから多種多様なスイッチング電源用ICが供給されており、いくつかの外部部品と組み合わせることで、DC/DCコンバータを実現可能な状況となっています。

しかしながら、要求仕様を満たすように、一から設計するのは容易なことではありません。ICメーカーが公表している回路例を参考にアレンジしようとしても、特に、初心者にとっては、「インダクタ、帰還ループ、ノイズ」という三点セットが立ちはだかり、「どこを、どのように」変更すればよいのか、はっきりしないのではないでしょうか。

私自身、データシートに記載されていた回路例を「そのまま」試作した経験があるだけですが、数年前から、技術顧問として、アドバイスしなければならない立場となりましたので、多くの資料を熟読し、シミュレーションで「実験」を繰り返してきました。

その結果、(私自身を含む)初心者向けの参考回路からのアレンジ法を得ることができましたので、提案したいと思います。少なくとも、大間違いのない、設計の出発点となる回路を求めることができると思います。

DC/DCコンバータ回路のキーとなる部品は、インダクタです。インダクタに流れる電流(平均電流+リップル電流)が、回路動作の基本と考えてよいでしょうから、まず、インダクタ値を決めます。

平均インダクタ電流は、インダクタ値には関係なく、入出力条件のみで決まりますので、リップル電流をどのくらいにするか(リップル電流比率=リップル電流/平均電流)が問題になります。そこで、選択の方針として、参考回路と同等のリップル電流比率とするようなインダクタ値とします。

ここからは、降圧DC/DCコンバータを例として説明していきます。入力12V、出力5V、3Aの参考回路があるものとします。シミュレーションファイル「降圧DC/DCテスト_12Vin5V3A.asc」を参照してください。

このシミュレーション回路で、参考回路のインダクタ電流(リップル電流比率)を調べます。スイッチング周波数、インダクタ値、出力コンデンサ値は、参考回路と同じ値とします。それぞれ、300KHz、10μH、22μFです。出力5V3Aですから、負荷抵抗RLは、5V/3A=1.667Ωとします。スイッチON時間は、出力電圧が5Vとなるように「手動で」調整するのですが、以下の計算式で求めることもできます。

スイッチON時間=スイッチング周期×(出力電圧+ダイオード順方向電圧)/入力電圧

シミュレーションファイルには、上式で計算したスイッチON時間とし、スイッチON抵抗とインダクタ直流抵抗を無視した回路、スイッチON抵抗とインダクタ直流抵抗を考慮した回路、さらにスイッチON時間を微調整した回路を収めてあります。インダクタ電流を調べる目的には、それほど神経質にならなくてもよいと思います。インダクタ値は、E6系列などの標準品から選択しますので、少々の誤差は問題になりません。

【変更例1】入力12V出力5V3Aから、出力電流のみ1Aに変更

シミュレーションファイル「降圧DC/DCテスト_12Vin5V1A.asc」を参照してください。出力5V3Aとするため、負荷抵抗RLは、5V/1A=5Ωにします。インダクタ値を変えて、出力電圧が5Vになるよう、スイッチON時間を手動調整します。シミュレーションファイルには、参考回路、参考回路と同じ定数で出力を1Aとした回路、インダクタ値を33μH、出力コンデンサ値を6.8μFとした回路を収めてあります。出力コンデンサ値は、L×Cが参考回路と同等となるように選んでいます。これは、帰還ループの応答に影響が少ないようにするためです。この変更後のコンデンサ値が最適とは断定できませんが、「設計の出発点」としては「妥当な」値だと思われます。

インダクタ値が10μHのままでは、リップル電流比率が大きすぎますが、33μHならば、ほぼ同等となることを確認してください。なお、動作原理的には、入出力電圧が同じで出力電流のみ変更する場合、出力電流が1/3ならば3倍のインダクタ値とすれば、リップル電流比率が同じになります。

次回以降、続編として「出力電圧のみ変更」など、他の変更例を取り上げていくつもりです。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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