
現代のデジタル回路で使われているロジックICは、CMOSタイプが主流といってよいでしょう。74HCシリーズなど、多種多様な汎用ロジックICが供給されていますし、マイコンなどのLSIもCMOSで構成されているものが多いようです。CMOS以前の主流デバイスは、TTL、DTLといった、ダイオードとバイポーラトランジスタによって構成されたICでした。TTLは、まだ現役ですが、DTLを見かけることはありません。しかし、ディスクリートのダイオード論理回路は、なにかと手軽なこともあり、使われることがあるのではないでしょうか。
シミュレーションファイル「ダイオード論理回路.asc」には、ダイオードと抵抗だけのAND回路とOR回路を収めてあります。ほとんどの方にとって「幼稚な」回路かもしれませんが、改めて特性を調べてみて、「けっこういける」気がするのは、私だけでしょうか。ダイオード論理回路は、ドライブ能力が十分ではありませんので、このままでは使えない場合もあるでしょうから、参考として、「DTL基本回路_NAND.asc」も示しておきます。ただし、この回路は基本原理図ですので、目的に応じて、抵抗値などを吟味する必要があります。
さて、ここで発想を転換して、ダイオード論理回路の別な使い方を考えてみます。つまり、デジタル回路ではなく、アナログ回路と考えます。
シミュレーションファイル「ダイオード論理回路にアナログ信号を入力.asc」を参照してください。ダイオード論理回路そのままの回路と、オペアンプを使った理想ダイオードで構成した回路を収めてあります。AND回路の出力電圧は、2つの入力電圧の内、低い方の電圧となっています。一方、OR回路の出力電圧は、2つの入力電圧の内、高い方の電圧となっています。これらの回路は、複数の入力電圧の最低値出力回路、最高値出力回路として機能しているわけです。
さて、このような回路の具体的な用途については、全く知りません。シミュレーションを示しておきながら、無責任なようですが、このような機能を必要とした経験もありませんし、(不勉強ゆえ)応用例も見たことがありません。ただし、入力の一方を固定電圧値とした場合には、リミッタ回路として機能しますので、少し変更した形で使った経験はあります。
話は変わりますが、上記の回路以外で、似たような回路として思い浮かぶのは、電源のダイオードOR接続です。電池とACアダプタ電源の切り替え、主電源OFF時のバックアップ電源への切り替えなどで、簡便な方式として使われているようです。電源の逆接防止も兼ねているところがミソです。シミュレーションファイル「電源のダイオードOR接続.asc」に一例を収めてあります。
今回、ダイオード論理回路から電源切り替え回路まで、取り止めのない話になってしまいましたが、固定観念に囚われず、発想を変えて考えてみることはよいことです。面白い発見があるかもしれません。お勧めします。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。