
複数要素の接続形態には、直列接続と並列接続があります。少々、堅苦しい表現となってしまいましたが、ほとんど無意識に使っている「技」です。小学校(中学?)の理科で習った「2個の電池のつなぎ方」が初めての「直列と並列」であったと思いますが、昨今の教育内容には不案内ですので、現在は別の素材を扱っているかもしれません。
今回は、同じ要素の直並列接続に限定して考察してみたいと思います。
抵抗
実際に入手可能な抵抗器単体では、要求を満たさない場合は、複数個を直列、並列に使うことで、必要な抵抗を合成しなければなりません。抵抗値については、大抵はE24系列で間に合うものですが、抵抗の定格電力が不足することは、結構ありそうです。例えば、「チップ抵抗で1W」は一般的とは言えないでしょうから、いくつかのチップ抵抗を使って、消費電力を分担させる「技」の出番となります。以下に、参考として、やや特殊な要求を満たすための例も挙げておきます。
・並列に存在する寄生容量を減らすために2個以上の抵抗を直列接続にする。
・耐圧を高めるために2個以上の抵抗を直列接続にする。
コンデンサ
コンデンサの容量値は、抵抗ほど細かくない場合が多いようですので、フィルタ用途などでは、複数個の直並列が必要になるケースが考えられますが、容量値そのものが問題になることは少ないでしょう。むしろ、寄生要素としての等価直列抵抗、等価直列インダクタンス(自己共振周波数)に注意すべきです。電源系に使われる、バイパスコンデンサ、リップルフィルタ、ノイズフィルタなどでは、効果を高めるために、複数のコンデンサを並列接続する例がありますが、これは、単純に容量値を大きくするためではなく、合成コンデンサの等価直列抵抗、等価直列インダクタンスを小さくする、あるいは、自己共振周波数を高くすることが目的です。
この辺りの理解が不足していると思わぬ失敗をしてしまうことがあります。例えば、DC/DCコンバータの出力ノイズを小さくしようとして、容量の大きなコンデンサに替えても、期待に反して、ノイズが増えてしまうかもしれません。
このような場合には、同じコンデンサを2個並列にする、または、(スパイクノイズに対しては)容量は小さいが等価直列抵抗、等価直列インダクタンスが小さいコンデンサ(具体的には0.1μFや1000pFのチップセラミックコンデンサで自己共振周波数が高い)を並列に追加する、などを検討すべきです。
シミュレーションファイル「出力コンデンサによるリップルの変化.asc」には、簡単なデモを収めてあります。コンデンサの等価直列抵抗、等価直列インダクタンスの影響が大きいことを確認してください。
単純な受動部品だけでなく、機能ブロックもひとつの要素と見做して、直列、並列を考えることができます。多段構成のアンプは、各段のアンプを直列接続したものと考えてよいでしょうし、並列接続動作のアンプもあります。これらは、単体のアンプでは不可能な特性を「数の力」で・・・、複数で「協力、分担して」実現する「技」です。
次回、「直列と並列」の続編として、オペアンプを使った増幅回路の直列(多段)、並列構成の効用、考え方について取り上げる予定です。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。