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オペアンプ増幅回路は、反転・非反転ともに、ポピュラーな回路です。入力抵抗(またはゲイン抵抗)と帰還抵抗の値によってゲイン設定ができますので、気軽に使えますが、当然のことながら、特性の制限も存在します。
オペアンプICをより高性能のものに変えれば、特性も改善されますが、複数のアンプを組み合わせて希望の特性を実現することも可能です。組み合わせ方には、直列(縦続、多段)接続と並列接続があり、それぞれ目的が異なります。
1.直列(縦続、多段)接続
シミュレーションファイル「オペアンプ2段増幅.asc」を参照してください。もとになる回路は、ゲイン10倍の非反転アンプです。この回路は、10KHz程度の信号を扱うことを想定したものです。使われているオペアンプICのGBPは1.5MHz(Typ)ですので、10倍のゲインならば、100KHz以上の帯域がありますので、10KHzに対して妥当な特性です。このアンプからゲイン100倍に変更(性能アップ)することを目標とします。
単純に抵抗値を変えて、1段増幅で100倍とした回路を収めてありますので、周波数特性を確認してください。比較しやすいように、出力に分圧回路を挿入して出力レベルを同じにしてあります。予想通り、帯域が狭く(十分の一)なっています。トランジェント解析で10KHzの正弦波を見ると、明らかに不十分な特性です。
次に、10倍のアンプ2段で100倍とした回路の特性を見てください。10倍1段の回路とほぼ同じ周波数帯域を実現できています。10KHzの正弦波も全く相似といってよい出力となっています。
もう一つ、下手な構成の2段アンプ回路も収めてあります。こちらは、50倍×2倍で100倍としています。当然ながら、周波数帯域が狭くなっており、オペアンプICの特性を活かしきっていません。同じオペアンプを使うならば、同じゲインとすることが最適設計となります。より一般的には、「各段のループゲインが等しくなるようにゲイン配分する」と考えればよいでしょう。ただし、周波数帯域以外の考慮すべき特性がある場合は、個別に検討しなければなりません。
2.並列接続
並列接続のアンプは、あまり馴染みがないかもしれませんが、ある分野では、常識的な「技」ではないかと思われます。ここでは、2つの例を紹介します。 シミュレーションファイル「並列アンプ_出力増強.asc」を参照してください。ゲイン2倍の非反転アンプで50Ω終端の同軸ケーブルを駆動しようとする回路ですが、使われているオペアンプICの出力駆動能力(出力電流5mA程度)では、十分ではありません。このような目的には、それなりのオペアンプICがあります。ビデオアンプ、ケーブルドライバなどですが、ここでは、並列アンプの考え方を示すために、「とってつけたような」ことをしています。
出力波形を見ると、電流制限が働いてしまい、正しい出力が得られていません。このように、オペアンプICの出力電流が不足する場合、出力を並列にすることで、必要なドライブ能力を実現できます。4つのアンプを並列接続した回路の出力を見てください。見事に、50Ω負荷をドライブできています。
ここで重要なことは、各アンプの出力に抵抗(Ro)があることです。この例では、4並列で50Ωとなるように200Ωとなっていますが、どのような値であっても、出力抵抗なしでは、出力の並列接続はできません。
シミュレーションファイル「並列アンプ_ノイズ低減.asc」には、10倍の非反転アンプを4つ並列とした回路がおさめてありますが、10倍の非反転アンプ単独と比べても、「全く同じ特性」しか持っていません。負荷抵抗は10KΩですから、出力駆動能力を大きくする効果も不要です。
シミュレーションでは、確認しようがないのですが、この並列アンプは、単独のアンプに比べて、入力換算ノイズが半分になって「いるはず」です。現在では、たくさんの優秀なローノイズオペアンプが入手可能ですので、このような回路構成をお勧めしているわけではないのですが、汎用のオペアンプで「もうちょっと、ノイズ特性を良くしたい」、あるいは、「最高級なオペアンプでも要求を満たせない」といった場合には、検討に値する回路構成でしょう。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。