
前回、誤差計算の見通しを容易にするため、3つの公式を示しました。これらを応用することで、電子回路に関して、ほぼすべての誤差計算ができると思いますが、補足として、いくつかの計算例を取り上げてみます。
誤差計算の公式を(結果のみ)再掲しておきます。
1.加算(抵抗の直列接続、コンデンサの並列接続などの場合)
E=(R1/R)e1+(R2/R)e2={R1/(R1+R2)}e1+{R2/(R1+R2)}e2
2.逆数(抵抗の並列接続、反転アンプのゲインなどの場合)
E≒-e
3.乗算(除算は、逆数の乗算として扱う)
E≒e1+e2
二乗
乗算の公式で、e1=e2=eとすれば、
E≒e1+e2=e+e=2e
平方根
上記、二乗の結果を見れば、E≒e/2と予想できますが、計算してみましょう。
1+E=√(1+e)
両辺を二乗して、
(1+E)(1+E)=1+e
左辺に二乗の結果を適用すると、(1+E)(1+E)≒1+2Eとなりますから、
1+2E≒1+e
両辺から1を引いて、
2E≒e
両辺を2で割って、
E≒e/2
上述の結果は、n乗、n乗根の場合に拡張できます。すなわち、n乗ならばE≒ne、n乗根ならばE≒e/nです。計算は省略しますが、容易に確かめられます。
抵抗分圧回路
分圧比B=R1/(R1+R2)、Bの誤差をE、R1の誤差をe1、R2の誤差をe2とすると、
B(1+E)=R1(1+e1)/{R1(1+e1)+R2(1+e2)}
右辺の分母の誤差項をe3とし、加算公式を使うと、
右辺の分母=(R1+R2)(1+e3)、ただし、e3={R1/(R1+R2)}e1+{R2/(R1+R2)}e2
これを代入すると、
B(1+E)=R1(1+e1)/{(R1+R2)(1+e3)}={R1/(R1+R2)}{(1+e1)/(1+e3)}
B=R1/(R1+R2)で両辺を割って、
1+E=(1+e1)/(1+e3)
右辺の1/(1+e3)に逆数の公式を使って、
1+E≒(1+e1)(1-e3)
乗算の公式を使って、
1+E≒1+e1-e3
両辺から1を引いて、e3の式を代入すると、
E≒e1-e3=e1-{R1/(R1+R2)}e1+{R2/(R1+R2)}e2
右辺を整理すると
E≒{R2/(R1+R2)}(e1-e2)
分圧比Bを使うと、{R2/(R1+R2)}=1-Bですから、
E≒(1-B)(e1-e2)
非反転アンプのゲイン
これは、練習問題にします。反転アンプと異なり、ゲインによって誤差が変わります。興味のある方は、計算してみてください。