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第72回:温度と熱

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第72回:温度と熱

温度、熱という言葉は、日常会話でも普通に使われるほど、一般名詞となっています。物理用語、あるいは、技術用語であると意識することの方が少ないでしょう。言葉として一般的であるだけでなく、理系の分野であれば、あらゆるところに登場する概念であり、パラメータです。

電気・電子分野でも、温度、熱(発熱、放熱)について考慮しなければ、「まともなもの」はできません。完璧に動作する回路を設計できたとしても、(小型化を意識するなどして)放熱が不十分な実装をしてしまうと、「冬限定」「5分以上の動作不可」などと取説に記載しなければなりません・・・冗談です、使い物になりません。

温度が変化すれば、回路要素の電気的特性も変化します。その結果、回路特性が変化し、問題となる場合がありますが、これに対しては、様々な温度補償回路を駆使するなどの対策があります。しかし、回路部品(特に半導体部品)の動作温度範囲を超えてしまうような温度上昇が起こると、補償どころではなく、劣化、破損に至ることもあります。

ここで注意を喚起しておきたいことがあります。大抵の部品は、使用温度範囲を超えても「それなりに動作してしまう」ということです。つまり、回路動作に問題がなくても、温度上昇については、別途、確認する必要があるわけです。

温度は目視では判定できませんので、温度計で測るのが正式でしょうが、「発熱の大きそうな部品を触ってみる」ことを「やや控えめに」推奨します。何かの本で読んだ、少し怪しい記憶ですが、ベテラン技術者のなかには、触診によって、10度くらいの誤差で「温度測定」できる達人がいるそうです。

さて、熱とは熱エネルギーです。回路の消費電力(入力電力と出力電力の差)が熱となります。では、温度とは何でしょうか。厳密な物理的意味は、専門書を参照していただくとして、電気関係の方に分かりやすい例えがありますので、ここで紹介します。温度は電圧、熱は電流と見做して考えます。電流は、電圧の高いところから低いところへ流れ、電流の「流れにくさ」が電気抵抗ですが、熱は、温度の高いところから低いところへ伝わり、熱の「伝わりにくさ」は、熱抵抗です。熱伝導の悪い部分の両端では、温度差が生じますから、正に「抵抗」と考えられます。

温度、熱に関するマクロな現象は、上述のように電気回路と相似性があるため、熱現象を等価回路として表現することができます。ICやトランジスタなどのデータシートには、パッケージごとの熱抵抗値(単位は℃/W)が記載されているか、または、許容消費電力・周囲温度グラフから読み取ることができます。

シミュレーションファイル「熱抵抗等価回路例.asc」は、あるトランジスタのデータを参考に「でっち上げた」等価回路です。電流源は、発熱源(トランジスタチップ)を表しており、R1、R2は、それぞれ、ジャンクション・ケース間熱抵抗(θjc)、ケース・雰囲気間熱抵抗(θca)です。T-J、T-C、T-Aの電圧値は、ジャンクション温度、ケース表面温度、周囲温度を示します。なお、コンデンサは、ケースの熱容量を模したものです。その値は、1分程で温度が落ち着くように塩梅しただけで、実物とは何の関係もない値であることをご承知ください。

ところで、普通の回路のシミュレーションは、回路設計に役立ちますが、この熱等価回路の使い道は「?」です。発熱(消費電力)と放熱、温度上昇についての考え方を理解するためには有用と思いますが、実務での熱設計に資するかどうか、疑問です。やはり、熱設計の要は、「試作、実験、経験の積み重ね」ということになると思います。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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