
一般的な電子機器での主な放熱経路は、熱伝導による放熱と考えてよいでしょう。半導体素子などで発生した熱は、放熱器、基板などに伝わり、最終的には、周囲の雰囲気に捨てられますが、その途中には、多くの不確定要素があり、放熱の全体像を把握するのはなかなか困難です。
しかしながら、熱伝導率データが知られている物質であれば、指定された形状での熱抵抗を計算できます。計算式は以下のようになります。
θ=L/(A・λ)
上式で、θは熱抵抗(℃/W)、Lは長さ(m)、Aは断面積(m^2)、λは熱伝導率(W/mK)です。この式の導出については割愛しますが、熱伝導率の定義式(P/A=λ・ΔT/L)から簡単な変形をするだけで得られます。
いくつかの具体的な要素について、その形状と材質の熱伝導率から熱抵抗を計算してみます。
1.φ0.8mm、長さ10mmの銅線
整流ダイオードなどのやや太いリード線を想定したものです。銅の熱伝導率は400としました。
θ={10/(π・0.4・0.4・400)}×1000≒50℃/W
2.厚さ50μ、幅1mm、長さ10mmの銅箔パターン
θ={10/(0.05・1・400)}×1000=500℃/W
3.1.6tガラスエポキシ基板、10mm×10mm、厚み方向の熱抵抗
ガラスエポキシ基板には、種々の材質があり、熱伝導率のデータが少ないようですが、大間違いのなさそうな値として、0.4としました。
θ={1.6/(10・10・0.4)}×1000=40℃/W
4.1.6t基板、φ1.0スルーホール、銅の厚み50μ
θ={1.6/(π・1・0.05・400)}×1000≒25℃/W
5.1.6t基板、φ1.0スルーホールに充填したハンダ
ハンダの熱伝導率は、組成によって違ってきますが、50としました。
θ={1.6/(π・0.5・0.5・50)}×1000≒41℃/W
上記、4、5の結果から、φ1.0スルーホールをハンダで埋めた状態では、25・41/(25+41)≒15.5℃/W
6.1.0t鉄板、幅10mm、長さ10mm
鉄の熱伝導率は80としました
θ={10/(1・10・80)}×1000=12.5℃/W
7.1.2tアルミ板、幅10mm、長さ10mm
アルミの熱伝導率は230としました。
θ={10/(1.2・10・230)}×1000≒3.6℃/W
8.真鍮製の六角スペーサ、M3メネジ、長さ10mm
断面積は19平方ミリと見積もりました。また、真鍮の熱伝導率は100としました。
θ={10/(19・100)}×1000≒5.26℃/W
計算結果について、私の感想は、「こんなものか???」です。ひょっとして、大間違いの可能性もありますので、ぜひとも、検算をお願いします。