
電気・電子回路におけるLCフィルタを用いたインダクタとコンデンサの関係性(3)
①はじめに
これまで、2次のLCローパスフィルタについて、終端抵抗値を変えて、周波数特性を調べてきました。今回は、ステップ応答を調べてみます。
②実験・検証
シミュレーション (ステップ応答)
シミュレーションファイル「LC_LPF_ステップ応答.asc」を参照してください。LPFの回路定数は同じ値(L=1.6mH、C=1600pF、fc=100KHz)とし、入力側終端の抵抗値を特性インピーダンス(1KΩ)の1/2~2倍まで1.4倍ステップで変えてあります。比較のため、RCフィルタ2段の回路も収めてあります。なお、RCフィルタの段間に電圧制御電圧源を挿入していますが、これは、理想バッファとして働きますので、正確なRCフィルタ縦続特性が得られます。
特性インピーダンスの1.4倍の抵抗値で終端した回路の出力(Out_S_Z_x_1.4)を見てください。この回路は平坦な周波数特性を持っているのですが、ステップ応答にはオーバーシュートとリンギングが発生しています。終端抵抗値が小さくなる(周波数特性のピークが大きくなる)につれて、オーバーシュートが大きくなっていきます。
オーバーシュートが発生しないようにするには、終端抵抗値を2倍とする必要があるようです。この回路の特性は、周波数特性も含めて、RCフィルタ2段の回路と全く同一です。試しに、抵抗値を1.9倍としてみましたが、僅かではありますが、オーバーシュートが発生しました。
注意してほしいのですが、「オーバーシュートが発生しないこと」が「優れた特性」を意味するものではない、ということです。当然のことながら、応用目的ごとに重視すべき特性は変わってきます。
シミュレーション (LCハイパスフィルタへの適用)
LCローパスフィルタの周波数特性について得られた結果は、LCハイパスフィルタにも適用できます。周波数の高低を逆にした特性になると予想することは容易でしょう。これを確認するために、以下のシミュレーションファイルを用意しました。
これらのシミュレーションファイルに収められた回路についての解説は、第81、82回の説明のなかの周波数の高低を逆に読み替えれば理解できると思います。それぞれ、対応するLPF回路も収めてありますので、周波数軸に対称なグラフを「鑑賞」することができます。
シミュレーション (LPF+HPF)
ローパスフィルタとハイパスフィルタを組み合わせたら、どんな特性になるでしょうか。そこで、シミュレーションファイル「LC_LPF+HPF_特性.asc」を作成してみました。同じfc(100KHz)のLPFとHPFを直列、並列に接続してあります。接続には、電圧制御電圧源を介することで、正確な特性合成(乗算、加算)をしています。実用的回路ではありませんが、意外な結果が見られますので、思考実験として楽しんでみてください。
今回のまとめ
LCフィルタについては、今回で一段落とします。次回は、「トランジスタ回路の基礎」を取り上げる予定です。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。