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第85回:電気・電子回路におけるトランジスタ回路の基礎 -エミッタ接地回路(2)-

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第85回:電気・電子回路におけるトランジスタ回路の基礎 -エミッタ接地回路(2)-

電気・電子回路におけるトランジスタ回路の基礎 -エミッタ接地回路(2)-

①はじめに

コレクタ負荷抵抗とベース抵抗を接続したエミッタ接地回路の動作を調べてみましょう。

シミュレーション

シミュレーションファイル「エミッタ接地_原理的回路.asc」を参照してください。トランジスタは、前回と同じ汎用小信号トランジスタ、供給電源電圧5V、コレクタ負荷抵抗100Ω、ベース抵抗10KΩとした回路です。

左側の回路は、直流特性を調べるために、入力電圧(Vin1)を10msで10V、直線的に変化させています。「ms」を「V」に読み替えれば、グラフの横軸(時間軸)の数値がそのまま入力電圧として直読できます。

中央の回路は、スイッチング応用を想定して、入力電圧(Vin2)を5Vの矩形波としています。右側の回路は、アナログ信号の増幅を想定して、入力電圧(Vin3)に1.5Vを中心値とする1Vppの正弦波を設定してあります。なお、これら二つの応用例は、「原理的な応用性」を示すためのデモとお考え下さい。実用的な応用には、目的に適した特性の吟味、回路要素の追加、定数の適正化が必要になります。

②エミッタ接地回路における入出力特性の関係式回路の入出力特性を表す式を導いてみましょう

入力電圧とベース電流の関係

ベース・エミッタ間は、ダイオード特性です。導通時の順方向電圧をVBEとし、特性を単純化して、「ベース・エミッタ間電圧がVBE以下では、ベース電流は流れず、VBE以上となってベース電流が流れている領域では、VBEは一定で変化しない」ものとします。この単純化によって、以下のような関係式となります。入力電圧をVin、ベース抵抗をRb、ベース電流をIbとします。

Vin<VBEの領域では、Ib=0です。Vin>VBEの領域では、Rbの両端に(Vin-VBE)の電圧が加わっており、Rbに流れる電流は、そのままベースに流れますから、Ib=(Vin-VBE)/Rbとなります。また、この領域でのVinの微小変化ΔVinに対するIbの微小変化ΔIbは、(VBEは一定ですので)ΔIb=ΔVin/Rbとなります。

VinとIbの関係式をシミュレーションの直流特性を調べる回路で確認してみてください。Q1のIbは、Vin1<VBE(約0.65V)では、ほとんど0で、Vin1>VBEでは、直線的に増加しています。増加率は、ΔVin=1Vに対して、ΔIb=ΔVin/Rb=1V/10KΩ=0.1mAになっていることを確認してください。

コレクタ電流と出力電圧の関係

コレクタ電流に関するトランジスタの特性も単純化して、「電流増幅率hFEは、コレクタ電流によらず一定で、コレクタ電流は、コレクタ電圧に依存せず、ベース電流のhFE倍となる」ものとします。

出力電圧Vout(=コレクタ電圧Vc)は、電源電圧Vpsからコレクタ抵抗Rcによる電圧降下分を引いた電圧となりますから、Vout=Vps-Ic×Rc=Vps-Ib×hFE×Rcとなります。この領域でのIbの微小変化ΔIbに対するVoutの微小変化ΔVoutは、(Vpsは一定ですので)ΔVout=-ΔIb×hFE×Rcです。ただし、最大コレクタ電流IcMAX=Vps/Rc以上の電流は(Ibが十分に大きくても)流れません。この状態は、Vout(=Vc)=0となる飽和領域です。この領域になるための条件は、Ic>IcMAX、Ib>IcMAX/hFE=(Vps/Rc)/hFE、さらに、(Vin-VBE)/Rb>(Vps/Rc)/hFE、Vinについての条件にすると、Vin>{(Vps/Rc)/hFE}×Rb+VBEです。

上記の関係式を組み合わせると次のような結果が得られます。

入力電圧と出力電圧の関係

Vin<VBEの領域(遮断領域)では、Vout=Vps-0×hFE×Rc=Vps

Vin>VBE、かつ、Ib×hFE<IcMAX(Vout>0)の活性領域(リニア領域)では、

Vout=Vps-Ib×hFE×Rc=Vps-{(Vin-VBE)/Rb}×hFE×Rc

=Vps-(Vin-VBE)×hFE×(Rc/Rb)

ΔVout=-ΔIb×hFE×Rc=-(ΔVin/Rb)×hFE×Rc=-ΔVin×hFE×(Rc/Rb)

電圧信号ゲインG=ΔVout/ΔVin=-hFE×(Rc/Rb)

Ib×hFE≧IcMAX、即ち、Vin>{(Vps/Rc)/hFE}×Rb+VBEの飽和領域では、Vout=0

今回のまとめ

これらの関係式に回路の定数を当てはめて計算し、シミュレーションで確認してみてください。なお、hFEは、シミュレーションのグラフから読み取ると、290くらいのようです。

次回は、実用的な応用回路で考慮すべき点について取り上げます。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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