
電気・電子回路におけるトランジスタ回路の基礎 -エミッタフォロワ(1)-
①はじめに
今回は、コレクタ接地回路ですが、エミッタフォロワという呼称の方が一般的でしょう。コレクタを電源に接続し、ベース・グランド間を入力とし、エミッタ・グランド間に負荷を接続する回路です。
②エミッタフォロワにおける入出力特性の関係
電圧制御電流源
シミュレーション(基本回路)
負荷として抵抗を接続し、エミッタから電圧出力を得る回路を基本回路として、動作を調べてみましょう。シミュレーションファイル「エミッタフォロワ_基本回路.asc」を参照してください。電源電圧は5V、エミッタ抵抗は100Ω、入力電圧は、5msで5Vまで変化させていますので、入出力特性を確認することができます。
エミッタフォロワの入出力特性は、単純です。出力電圧は、入力電圧からVBEを引いた電圧になります。ただし、入力電圧がVBE以下では、出力電圧は0Vです。電圧ゲインは、G=ΔVout/ΔVin≒1となります。このような特性になる動作原理を考えてみてください。活性領域(トランジスタに電流が流れている状態)では、VBEが(近似的に)一定である、という点に着目すれば、容易に理解できると思います。
さて、エミッタフォロワの入出力特性式は、Vout=Vin-VBEとなりますから、hFEは影響していません。これは、「エミッタ抵抗によって負帰還が掛かっているため」と考えられます。以下に、この負帰還について、定性的な説明をします。
入力電圧が一定値のときに、何らかの原因でエミッタ電流が増加した、とします。すると、エミッタ抵抗両端の電圧は増大しますから、エミッタ電位は高くなります。ベース電位は一定ですから、ベース・エミッタ間の電圧は小さくなり、ベース電流は減少、エミッタ電流も減少となり、初めの変化を打ち消す方向に働きます。エミッタ電流が減少した場合も同様に、変化を打ち消す働きをします。
エミッタフォロワの出力電圧は、エミッタ抵抗の値(エミッタ電流値)に影響されませんが、出力電流特性には、注意が必要です。具体的に言えば、出力抵抗とシンク電流です。
シミュレーション(出力抵抗)
エミッタフォロワの出力抵抗Roは、エミッタ電流Ieで決まり、Ro=26/Ie(Ieの単位はmA)で計算できます。シミュレーションファイル「エミッタフォロワ_出力抵抗.asc」を参照してください。出力抵抗を調べるために、出力端に電流源を接続し、10mAの電流変化を与えています。出力電圧の変動分を読み取って、Ro=ΔVout/10mAによって出力抵抗を計算できます。また、比較のために、エミッタ抵抗を定電流負荷(電流値26mA)で置き換えた回路も収めてあります。
抵抗負荷の場合、出力電圧レベルによってエミッタ電流が変わるため、出力電圧が低いほど、出力抵抗が大きくなり、より大きな出力電圧変動が起こっています。定電流負荷とした回路では、出力電圧レベルによらず、出力抵抗は一定となっており、同じ大きさの出力電圧変動になっています。
シミュレーション(出力シンク電流)
エミッタフォロワの出力シンク電流は、エミッタ電流値が上限値となります。ソース電流については、動作原理上の制限はありません。トランジスタの仕様(最大コレクタ電流、最大コレクタ損失など)による制限と入力側のドライブ能力を考慮する必要はあります。
シミュレーションファイル「エミッタフォロワ_シンク電流.asc」を参照してください。シンク電流が問題となる一例として出力にコンデンサを接続した回路を収めてあります。エミッタ抵抗を100Ωとした回路では、出力波形は入力波形と相似ですが、エミッタ抵抗が1KΩの回路では、立下りが「なまって」います。これは、シンク電流不足によって、コンデンサの放電時間が長くなっているためです。
今回のまとめ
エミッタフォロワは、大変有用な回路です。大いに研究して使いこなせるようになってください。なお、次回は、エミッタフォロワの基本回路にコレクタ抵抗を追加した回路を取り上げます
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。