
電気・電子回路におけるトランジスタ回路の基礎 -エミッタフォロワ(2)-
①はじめに
前回解説した、エミッタフォロワの動作原理を出発点として、その考え方をさらに発展させたトランジスタ回路を取り上げてみましょう。
②エミッタフォロワにおける入出力特性の関係と回路例
電圧制御電流源
エミッタフォロワの入出力特性は、Vout=Vin-VBEです。出力に何も接続しなければ、エミッタ電流Ieは、すべてエミッタ抵抗Reに流れます。Vout(エミッタ電圧)は、そのまま、エミッタ抵抗Re両端の電圧ですから、
Ie=Vout/Re=(Vin-VBE)/Re
となります。
ここで、コレクタ電流Icを考えてみましょう。Ie=Ic+ベース電流Ib=Ic+Ic/hFEですが、hFEは通常100程度はありますので、Ic=Ieとしても、十分よい近似でしょう。従って、
Ic=Ie=(Vin-VBE)/Re
となり、コレクタ電流は、入力電圧とエミッタ抵抗とVBEで決まります。これは、電圧で電流値を制御できる電流源回路となっていることを示しています。しかも、hFEの変化に影響を受けません。
シミュレーション
シミュレーションファイル「電圧制御電流源.asc」を参照してください。LEDを定電流駆動する応用例です。入力電圧がVBE以上の領域で、LED電流が入力電圧の増加に比例して、直線的に増加する様子が確認できます。また、エミッタ抵抗を2倍の抵抗値として、LED電流を半分に設定した回路も収めてあります。さらに、入力電圧が一定であれば、電源電圧が変化しても、LED電流は一定値を保つこと(定電流性)を確認できる回路も収めています。
電圧増幅回路
上記、電圧制御電流源回路の負荷としてコレクタ抵抗Rcを接続し、コレクタから出力電圧を取り出す回路を考えてみましょう。
コレクタ抵抗Rcには、コレクタ電流Icが流れ、Ic×Rcの電圧降下が生じます。コレクタ出力電圧Voutは、電源電圧Vspからコレクタ抵抗の電圧降下(Ic×Rc)を引いた電圧となりますから、
Vout=Vsp-Ic×Rc
です。この関係式に入力電圧Vinとコレクタ電流Icの関係式Ic=(Vin-VBE)/Reを代入して、
Vout=Vsp-{(Vin-VBE)/Re}×Rc=Vsp-{(Vin-VBE)×(Rc/Re)}
Vinの変化分ΔVinに対するVoutの変化分ΔVoutの関係式は、
ΔVout=-ΔVin×(Rc/Re)
となり、電圧ゲインGは、
G=ΔVout/ΔVin=-(Rc/Re)
ですから、エミッタ抵抗とコレクタ抵抗の比率のみでゲインが決まります。この結果は重要です。
シミュレーション
シミュレーションファイル「電圧増幅回路.asc」には、ゲイン10倍に設定した回路を収めてあります。なお、コンデンサ結合を使った交流アンプのRb1、Rb2は、動作点を設定するためのバイアス回路です。
VBE補償
ベース・エミッタ間電圧VBEは、トランジスタ回路の宿命的「問題」のように思えます。VBEには、バラツキ、温度変化もありますから、厄介です。いくつかのVBE補償方法が知られていますが、一例として、PNPトランジスタと組み合わせる方法を紹介したいと思います。
シミュレーション
シミュレーションファイル「VBE補償.asc」を参照してください。収められている回路の説明は割愛しますが、研究してみてください。
今回のまとめ
次回は、差動アンプなどの回路を取り上げてみます。かなり高度な回路ですので、あくまでも「概観」レベルになると思われます。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。