
電気・電子回路におけるトランジスタ回路の基礎 -差動アンプ、カレントミラー、その他-
①はじめに
今回は、差動アンプ、カレントミラーなどの回路を取り上げてみます。細かい動作原理の解説は省略しますが、確認いただくためのシミュレーションファイルを用意しました。
②シミュレーション
差動アンプ
差動アンプ自体は、真空管時代からあり、この回路無しでは、実用的な性能を持ったトランジスタ回路は組めないのではないでしょうか。事実、オペアンプIC、コンパレータICなど、多くのICは、差動アンプ回路を使っています。シミュレーションファイル「差動アンプ_基本特性.asc」を参照してください。抵抗はすべて1KΩとなっていますが、この値は計算したわけではありませんので、抵抗値を変えて、特性の変化を楽しんでください。
シミュレーションファイル「差動アンプ_信号増幅.asc」では、正弦波を入力して、信号増幅をデモしています。入力信号のレベルを上げると、信号が歪んで、やがて飽和し、クリップされる様子などを観察してみてください。
カレントミラー回路
前回、電圧制御電流源を紹介しましたが、カレントミラーは、電流制御電流源と考えられます。基本回路は、入力電流と同じ電流を負荷に流します。しかも、同時に複数の電流源とすることができます。
言葉で説明するよりも回路を見た方が、解り易いですから、シミュレーションファイル「カレントミラー回路.asc」を参照してください。極めて単純な回路が多数収めてありますが、これらの回路は、ほぼ、実用回路といえます。要点は、特性の揃ったトランジスタを組み合わせることですが、エミッタに抵抗を追加した回路では、特性のミスマッチによる影響を軽減します。実験回路など、多少の誤差は気にしなくてもよいのであれば、実際に作ってみることをお勧めします。
SEPP (Single Ended Push-Pull) 回路
シミュレーションファイル「SEPP回路.asc」を参照してください。NPNとPNPの2つの極性が反対のエミッタフォロワによって、プッシュプル動作をさせる回路です。ただし、ここに示した回路は、基本概念を理解するためのものであり、電流制限などの保護回路を追加しなければ、実用に供することは危険です。尚、ゼロバイアスの回路は、MOSFETのゲートドライバとして使われているのを見た記憶があります。
差動アンプ回路の応用変形
シミュレーションファイル「差動アンプ_応用変形.asc」を参照してください。差動アンプの基本回路から変形、発展させてみました。目的に応じた、回路の変形、および、組み合わせ方の例としてご覧ください。
差動出力が不要な場合には、コレクタ抵抗は省略できます。単純な反転、または、非反転アンプになりますが、トランジスタ1石のアンプと比べて、入力DCレベルの設定が容易です。
差動アンプの出力コレクタ電流をカレントミラーに入力して、負荷抵抗を調整し、出力DCレベルを入力DCレベルと同じ、0Vにシフトします。出力にバッファとして、SEPP回路を追加し、出力特性を向上させます。出力DCレベルを0Vにするために、負荷抵抗を微調整しました。
オペアンプICらしくなってきましたので、負帰還を掛けて、ゲインが-1の反転アンプを構成してみました。シミュレーション上ではありますが、なかなかの特性が得られたようです。
今回のまとめ
トランジスタ回路の基礎は、今回で一区切りとし、次回以降は、オペアンプ回路の基礎を取り上げる予定です。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。