
電気・電子回路におけるオペアンプ回路 -理想オペアンプ-
①はじめに
今回から数回にわたって、オペアンプ回路を取り上げます。オペアンプには、多種多様な応用回路がありますが、最も一般的な電圧増幅回路について、少し詳しく調べてみたいと思います。なお、オペアンプICを使った、反転アンプ、非反転アンプについての基本的な知識があることを前提としていますが、オペアンプ関連の参考書籍など、多くの情報源がありますので、興味のある方、あるいは、必要に迫られている方は、それらを参照してください。
②理想オペアンプとは
オペアンプ回路の原理的動作を理解するために、オペアンプは、「理想的な特性を持つ」と仮定して考える方法があります。理想的な特性とは、以下のような特性です。
・反転入力、非反転入力ともに、入力インピーダンスは「無限大」で、電流は流れない。
・増幅度(オープンループゲイン)は「無限大」。
・出力インピーダンスはゼロ(理想的電圧源)。
この考え方は、大変有用ですが、かつては、机上の(計算上の)概念であったため、「感覚」が掴みにくいものでした。計算の間違いなどがあっても、検算以外に確認方法がありません。
さて、シミュレーションには、電圧制御電圧源というコンポーネントがありますが、これは、理想オペアンプそのものです。ゲイン無限大の設定はできないようですが、極めて巨大な値を設定すれば、上記の理想特性をすべて備えています。さらに、設定値を変え、抵抗などを追加することで、理想的特性から「はずれた」現実のオペアンプに近い特性として、その影響を比較、検討できます。何といっても、動作信号を直視できるのは、有難いことです。
シミュレーション
シミュレーションファイル「理想オペアンプ.asc」を参照してください。電圧制御電圧源を理想オペアンプとして使い、反転アンプ、非反転アンプを構成しています。電圧制御電圧源のゲイン設定値は、1ギガ(10億倍)としました。
③ループゲインとゲインエラー
オペアンプの開ループゲインが無限大でない場合の閉ループゲインを調べてみましょう。少し詳しい参考書籍ならば、記載されていると思いますので、計算の概略を示すにとどめます。
オペアンプの反転入力の電位をVn、非反転入力の電位をVp、出力をVout、開ループゲインをAopとすると、
Vout=(Vp-Vn)×Aop ・・・・・(1)
となります。
非反転アンプならば、アンプ入力をVin、帰還抵抗をRFB、ゲイン設定抵抗をRGとして、
Vp=Vin、Vn=Vout×{RG/(RFB+RG)}
ですから、上記(1)式に代入すれば、入出力関係が計算できます。
ここで、非反転ゲインをGp=Vout/Vin、設計ゲインをGpd=(RFB+RG)/RG、ループゲインAlp=Aop/Gpdとすると、以下の結果が得られます。(計算略)
Gp=Gpd×{Alp/(Alp+1)}
反転アンプの場合には、アンプ入力をVin、帰還抵抗をRFB、ゲイン設定抵抗をRGとして、
Vp=0、Vn=Vin+(Vout-Vin)×{RG/(RFB+RG)}
となり、少し複雑な計算ですが、上記(1)式に代入すれば、同様に入出力関係が計算できます。
ここで、反転ゲインをGn=Vout/Vin、設計ゲインをGnd=-(RFB/RG)、ループゲインについては、同じ抵抗値の非反転アンプと見做した時のループゲインAlp=Aop/(-Gnd+1)とすると、以下の結果が得られます。
Gn=Gnd×{Alp/(Alp+1)}
シミュレーション
シミュレーションファイル「ループゲインとゲインエラー.asc」を参照してください。ループゲインが∞、100、10、1の場合のゲインエラーを確認できます。計算と比べてください。見事な一致です。
今回のまとめ
次回は、周波数特性を調べてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。