
電気・電子回路におけるオペアンプ回路 -周波数特性(1)-
①はじめに
現実のオペアンプICは、周波数特性を持っており、高い周波数になるとゲインが低下します。この特性は、そのオペアンプICが使われる周波数範囲の大部分では、1次のローパス特性と考えてよいでしょう。
シミュレーション
この様子を見るために、シミュレーションファイル「オペアンプの周波数特性.asc」を用意しました。2種類のオペアンプICと、その特性を1次RCローパス回路で近似した回路を収めてあります。U1のDCゲインは110dBほどもありますが、fc≒14Hzでゲインが低下しています。U2は、高速タイプのオペアンプICですが、DCゲインは80dB、fc≒4.5KHzです。
②非反転アンプの周波数特性について
前回、非反転アンプのゲインを求めましたが、周波数特性は考慮していませんでした。そこで、開ループゲイン特性が1次ローパス特性を持つ場合のゲインを再考してみましょう。
1次のローパス特性は、遮断周波数をfcとして、α=f/fcを使って相対周波数で考えると見通しが良くなり、以下の式で表すことができます。
A(α)=K(α)×(1-jα)・・・・・(1)、ただし、K(α)=1/(α×α+1)
オペアンプの開ループDCゲインをAop、設計ゲインをGpd=(RFB+RG)/RG、DCループゲインをAlp=Aop/Gpdとすると、開ループゲインは、Aop A(α)、ループゲインは、Alp A(α)となります。
これを前回の結果に代入すると、非反転アンプのゲインは、
Gp(α)=Gpd×{Alp A(α)/(Alp A(α)+1)}
となりますが、分母に虚数項があるため、このままでは、様子がわかりませんので、(1)式を代入して整理します。複素多項式の計算は省略しますが、以下の結果が得られます。
Gp(α)=Gpd×F(Alp,α)×{1-jα(Alp+1)}・・・・・(2)、ただし、F(Alp,α)は、Alpとαの多項式
ここで、遮断周波数の条件式、α(Alp+1)=1から、非反転アンプの遮断周波数fc1=fc×(Alp+1)を求めることができます。さらに、β=f/fc1=α(Alp+1)を導入して、α=β/(Alp+1)を(2)式に代入すると、
Gp(β)=Gpd×{Alp/(Alp+1)}×A(β)・・・・・(2)
ここで、
A(β)=K(β)×(1-jβ)、ただし、K(β)=1/(β×β+1)
となります。
結果は「シンプル」です。非反転アンプの周波数特性は、1次のローパス特性で、遮断周波数は、開ループ特性の遮断周波数の(DCループゲイン+1)倍です。負帰還の効果により、ゲイン平坦な領域が広くなっていることがはっきりと示されています。
シミュレーション
シミュレーションファイル「非反転アンプの周波数特性.asc」を参照してください。上記の計算結果を確認するために、オープンループゲイン1000倍、遮断周波数1KHzのオペアンプを構成し、ゲイン100、10、1倍の非反転アンプを収めてあります。それぞれ、ループゲイン=10、fc=11KHz、ループゲイン=100、fc=101KHz、ループゲイン=1000、fc=1001KHz、となっています。なお、fcの確認は、カーソルを使って位相が45度となる周波数を読み取ります。
今回のまとめ
オペアンプ回路の周波数特性を検討する方法には、上記の計算式ではなく、ゲイン帯域幅積(GBP)を使う、簡便な方法があります。次回は、ゲイン帯域幅積(GBP)の解説、その他、引き続き、周波数特性について調べてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。
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