
電気・電子回路におけるオペアンプ回路 -周波数特性(2)-
①はじめに
オペアンプICの周波数特性は、ほぼ、1次のローパス特性ですが、この特性を以下のように近似して考えると、簡便な検討が可能になります。開ループDCゲインをAop、遮断周波数をfc、相対周波数α=f/fcとします。
f<fcならば、A(f)=Aop(fcまでは、ゲインは一定)
fc≦fならば、A(f)=(Aop ×fc)/f(fcより高い周波数では、ゲインは周波数に反比例して減少)
ここで、GBP=Aop ×fcと定義すると、この値は、オペアンプICの周波数特性を特徴づける、固有な特性値となります。GBPとは、Gain Bandwidth Product、利得帯域幅積を意味しています。単位は周波数(Hz)で、f=GBPの周波数で、ゲイン=1となります。
上記の近似式は、1次のローパス特性式
A(α)=K(α)×(1-jα)、ただし、K(α)=1/(α×α+1)
を以下のように近似した結果で、1≪αの領域では、非常によい近似です。
A(α)=K(α)×(-jα)、ただし、K(α)=1/(α×α)
A(α)=-j/α・・・・・(1)
②非反転アンプの周波数特性について
近似式(1)を用いて、非反転アンプの周波数特性を求めます。前回と同様、オペアンプの開ループDCゲインをAop、設計ゲインをGpd=(RFB+RG)/RG、DCループゲインをAlp=Aop/Gpdとします。
Gp(α)=Gpd×F(Alp,α)×(1-jα/Alp)・・・・・(2)、ただし、F(Alp,α)は、Alpとαの多項式
ここで、遮断周波数の条件式、α/Alp=1から、非反転アンプの遮断周波数fc1は、fc1=fc×Alpとなります。β=f/fc1=α/Alpを導入して、α=β×Alpを(2)式に代入すると、
Gp(β)=Gpd×A(β)
ここで、
A(β)=K(β)×(1-jβ)、ただし、K(β)=1/(β×β+1)
となり、1次のローパス特性で、遮断周波数は、開ループ特性の遮断周波数のDCループゲイン倍です。
この結果式と前回の式を比べると、Alp+1≒Alpとする近似となっていることがわかります。
シミュレーション
シミュレーションファイル「非反転アンプの周波数特性と近似特性比較.asc」を参照してください。オープンループゲイン1000倍、遮断周波数1KHzのオペアンプを使って、ゲイン100、10、1倍の非反転アンプを構成し、それぞれに対応する近似特性を持つ回路を収めてあります。
今回のまとめ
さて、近似式を用いた非反転アンプの遮断周波数fc1は、fc1=fc×Alpです。Alp=Aop/Gpdですから、
fc1=fc×Alp=fc×Aop/Gpd=GBP/Gpd
となり、極めて有用な関係式が得られました。オペアンプICのGBPを設計ゲインで割れば、非反転アンプの遮断周波数が計算できます。また、ゲインと遮断周波数が与えられているならば、GBP=fc1×Gpdによって、必要なGBPが計算できますので、オペアンプICの選択に役立ちます。
次回は、オペアンプICの入力特性、出力特性によって生じる誤差、制限等について、調べてみたいと思います。
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