
電気・電子回路におけるオペアンプ回路 -加算アンプ-
①はじめに
複数の入力信号を加算して出力する回路は、特殊なものではありません。例えば、正負の値をとる入力信号を単電源回路で処理する場合、レベルシフトをして正電圧範囲の信号にしますが、これは、正負の信号とDC信号の加算回路を使って実現されています。
②加算アンプについて
反転加算アンプ
オペアンプを使った加算回路には、反転アンプの入力抵抗を複数並列に反転入力端に接続して構成される、反転加算アンプがあります。
シミュレーション
これは、よく知られている回路ですので、基本的な説明は割愛しますが、シミュレーションファイル「反転加算アンプ.asc」に簡単な回路例を収めてあります。
反転加算アンプで見落としがちな点は、単一入力の反転アンプよりループゲインが小さくなるため、周波数特性が悪化することです。
シミュレーション
シミュレーションファイル「反転加算アンプの周波数特性.asc」を参照してください。既存回路の変更で、加算入力を追加する場合など、周波数特性の再検討を怠ると、思わぬ失敗をする可能性がありますので、注意が必要です。
抵抗加算回路
入力電圧の加算機能を実現するだけであれば、抵抗のみで回路構成できます。
シミュレーション
シミュレーションファイル「抵抗加算回路.asc」に簡単な回路例を収めてあります。各入力から出力へのゲインは、抵抗値のみで決まります。
3入力の場合を考えてみましょう。Vin1からR1、Vin2からR2、Vin3からR3、を介してVoutに出力されており、G1=Vout/Vin1、G2=Vout/Vin2、G3=Vout/Vin3として計算すると、以下の結果が得られます。
G1=R2R3/(R1R2+R2R3+R3R1)
G2=R3R1/(R1R2+R2R3+R3R1)
G3=R1R2/(R1R2+R2R3+R3R1)
G1:G2:G3=(1/R1):(1/R2):(1/R3)=(R3/R1):(R3/R2):1
つまり、抵抗加算回路の後段に、(1/G3)倍の非反転アンプを縦続すれば、反転加算アンプと相似の非反転加算回路となることが見て取れます。
非反転加算アンプ
上記の(1/G3)倍の非反転アンプのRG、RFBを計算すると、きれいな結果となります。非反転アンプのゲインGは、G=1+(RFB/RG)、目標のゲインは、1/G3=(R1R2+R2R3+R3R1)/R1R2ですから、
1+(RFB/RG)=(R1R2+R2R3+R3R1)/R1R2
これを整理すると、
RFB=R3
RG=R1R2/(R1+R2)=「R1とR2の並列合成抵抗値」
とすればよいことがわかります。
シミュレーション
シミュレーションファイル「非反転加算アンプ.asc」を参照してください。この回路を見ると、反転加算アンプと見事に相似となっています。さらに、差動加算回路の構成が発見できると思います。
今回のまとめ
次回は、差動アンプ、インスツルメンテーションアンプ(計装アンプ)などを取り上げてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。
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