電気・電子回路におけるコンデンサ -バイパスコンデンサ-
①はじめに
最も典型的なコンデンサの使用例は、ICなどの電源端子に接続されるバイパスコンデンサでしょう。さらに、一般的なオペアンプIC、デジタルICでは、0.1μFのチップセラミックコンデンサが定番になっております。
ICなどを含む電子回路が要求する電源の特性は、かなり厳しいものです。接続のための配線などを含めた、現実の電源回路の特性では、ICなどを確実に動作させるためには、電源バイパスコンデンサは必須と言ってよいでしょう。
②バイパスコンデンサについて
さて、バイパスコンデンサには、二つの役割があると考えられます。ひとつは、電源回路が応答できないような高速の負荷変動に対処することであり、もうひとつは、電源から混入するノイズを除去・軽減することです。
これら二つの役割についての定量的な考察は、やや困難です。そこで、非現実的にならないレベルで、妥当と思われるシミュレーション回路を使って、定性的にコンデンサの働きぶりを見ていきたいと思います。
負荷変動
シミュレーション
シミュレーションファイル「電源バイパスコンデンサ_負荷変動.asc」を参照してください。高速負荷変動の例として、CMOSデジタルICの出力回路を想定した模擬回路を構成し、出力の負荷として、10KΩと100pFを接続しました。これによって、スイッチングに伴う充放電電流がパルス状に流れます。電源は、0.1μHと1Ωを出力インピーダンスとしてあります。
IC1_V+_pinを見てください。バイパスコンデンサ無しの回路では、大きな電圧変動が発生しています。IC2_V+_pinを見ると、バイパスコンデンサの働きによって、全く電圧変動していません。
チップセラミックコンデンサ単体であれば、ほぼ理想的なバイパスコンデンサと見なせますが、基板に実装すると配線パターンの寄生インダクタンスが影響してきます。IC3_V+_pin 、IC4_V+_pinを見てください。不適切なパターン設計を想定して、10nHのインダクタを挿入した回路では、バイパスコンデンサの「効き」が鈍くなっています。昔から言われてきた、「太く短く」「電源ピンから直近で」は、切実な訴えであったわけです。
なお、配線パターンの寄生インダクタンスについて、私は、「長さ1mmで1nH」を目安としています。大きめの見積もりかもしれませんが、「桁違いは無い」のではないかと思っています。この辺りに詳しい方が居られましたら、ご教授いただければ幸いです。
ノイズ除去
シミュレーション
シミュレーションファイル「電源バイパスコンデンサ_ノイズ除去.asc」を参照してください。ノイズが「乗っている」電源の例として、上記のバイパスコンデンサ無しの回路で電圧変動が発生した電源を使っています。電源ラインにフェライトビーズを挿入し、バイパスコンデンサと組み合わせてノイズフィルタを構成しています。なお、電圧制御電圧源を使っているのは、回路間の干渉を防止するためです。
NF1_OUTは、理想的な実装をした場合、NF2_OUTは、配線パターンの寄生インダクタンスがある場合を想定しています。ノイズフィルタの「効きが鈍る」ことを確認してください。
今回のまとめ
次回は、引き続き、コンデンサの使用例について取り上げます。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。
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