
電気・電子回路におけるコンデンサ -交流結合コンデンサ(カップリングコンデンサ)-
①はじめに
信号処理系に使われるコンデンサで、最も一般的な用途は、周波数帯域を制限するためのフィルタでしょう。なかでもローパスフィルタ(LPF)は重要で、ほとんどの回路で見かける機能要素です。
フィルタ以外では、直流カットを目的とした、交流結合コンデンサとしての用途が多いのではないでしょうか。結果的にハイパスフィルタ(HPF)を構成してしまうのですが、帯域制限が主目的ではありませんので、フィルタ以外の用途と考えます。最近では、交流信号を扱うアナログ回路でも、単電源回路とする傾向にありますから、交流結合コンデンサの使い方に習熟することは大切であると思います。
②交流結合コンデンサについて
シミュレーション
シミュレーションファイル「AC結合コンデンサ_基本回路.asc」を参照してください。信号周波数は1KHz、結合コンデンサ0.1μFと負荷抵抗16KΩで構成されるHPFの遮断周波数は100Hzとしています。
Vin_1は、直流レベル2.5Vを中心に±1Vの信号入力で、Vout_1は、直流レベル0Vを中心に±1Vの信号出力となっています。5V単電源アンプ回路の出力2.5V±1Vを直流成分のない0V±1Vに変換(レベルシフト)することを想定したものです。
Vin_2は、0V±1Vの信号入力で、Vout_2は、2.5V±1Vの信号出力となっています。直流成分のない交流信号を、5V単電源アンプ回路(2.5Vを中心に動作)に入力することを想定したものです。
Vin_3は、6V±1Vの信号入力で、Vout_3は、2.5V±1Vの信号出力となっています。12V単電源アンプ回路(6Vを中心に動作)の出力を、5V単電源アンプ回路に入力することを想定したものです。
直流レベルを供給している電圧源は、初期値を0Vとして、1msで立ち上がるように設定しています。これは、実際の回路での電源の立ち上がりを想定していますが、そのために、Vout_1、Vout_2、Vout_3ともに、定常状態に落ち着くまでに10msほどの時間を要しています。このセトリングタイムは、しばしば問題となりますので、注意が必要です。
定常状態では、結合コンデンサは、直流レベル差に相当する電圧に充電されていますが、その充電は、結合コンデンサ0.1μFと負荷抵抗16KΩによる時定数τ=0.1μF ×16KΩ=1.6msで規定される充電特性になります。
交流信号をなるべく忠実に通過させるためには、信号周波数に対して十分に低い遮断周波数とする必要がありますが、遮断周波数を低くするほど、セトリングタイムが長くなりますから、相反する条件を満たすように定数を決めなければなりません。要求仕様によっては、条件を満たすことが不可能な場合もあります。そのような場合は、結合コンデンサ方式とは異なる回路構成を案出しなければなりません。
シミュレーション
シミュレーションファイル「AC結合コンデンサ_オペアンプ回路例.asc」を参照してください。5V単電源オペアンプを使った回路の簡単な例を収めてあります。動作の基準レベル(2.5V)を作る回路が異なる、3種の例を示しています。これらの違いに着目して、動作を考えてみてください。
単電源オペアンプを使って、ゲインを持たせた回路、反転アンプ回路など、多くのバリエーションが構成可能ですが、内容が豊富ですので、これらについては、別の機会に取り上げてみたいと思います。
今回のまとめ
次回は、「ちょっと面白い」オペアンプ回路を取り上げます。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。
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