
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -移相回路-
①はじめに
今回は、移相回路について、動作の仕組みを解説してみようと思います。
②移相回路について
信号出力回路
シミュレーション
シミュレーションファイル「移相回路.asc」を参照してください。オペアンプは、理想オペアンプを使っています。入力信号は振幅1V、周波数1KHzの正弦波です。動作の「カギ」となるRC回路の遮断周波数fc=1KHzとしています。
Vout_A、Vout_Bともに位相が90度ずれていますが、振幅は入力と同じ1Vのままです。 AC解析モードにして周波数特性を調べてみてください。ゲインは周波数によらず0dB(1倍)で一定で、位相のみが変化する特性が確認できます。
シミュレーション
シミュレーションファイル「移相回路_連続可変デモ.asc」では、RC回路のfcを変化させており、振幅一定で位相のみが変わる様子がよくわかります。(抵抗値を{VR}とし、8KΩから24KΩまで2KΩステップで変化させています。)
さて、元の回路全体を眺めていても、動作が見通せませんので、RC回路とオペアンプ回路に分けて考えてみます。
シミュレーション
シミュレーションファイル「移相回路_オペアンプ部.asc」を参照してください。Vin-入力からの入出力特性はゲイン=-1の反転アンプ、Vin+入力からの入出力特性はゲイン=2の非反転アンプですから、Vout=(Vin+×2)-(Vin-)となります。
移相回路の回路構成を見ると、オペアンプ回路のVin-には、信号入力Vinがそのまま加えられ、Vin+には、RC回路を通した信号が入力されています。
シミュレーション
シミュレーションファイル「移相回路の動作原理.asc」を参照してください。上記の信号演算を電圧制御電圧源を使って実現した回路で、移相回路の特性が再現されていることを確認できます。
入出力関係式を見てみましょう。RC回路の出力をローパスフィルタ型の場合はV_LP、ハイパスフィルタ型の場合はV_HPとすると、以下のようになります。
Vout_A=V_LP×2-Vin=V_LP -(Vin-V_LP)
Vout_B=V_HP×2-Vin=V_HP -(Vin-V_HP)
RC回路の出力の演算が出てきましたので、これを調べてみましょう。
シミュレーション
シミュレーションファイル「RC_LP_HP_出力の加減算.asc」を参照してください。
V_LP+V_HPに注目してください。この特性は全くのフラットですから、出力は、Vinそのものになります。従って、V_LP+V_HP=Vinとなり、この式から、Vin-V_LP=V_HP、Vin-V_HP=V_LPの関係式が得られます。この関係は、シミュレーションで直接確認することができます。
この関係式を移相回路の式に適用すると、
Vout_A=V_LP×2-Vin=V_LP -(Vin-V_LP)=V_LP-V_HP
Vout_B=V_HP×2-Vin=V_HP -(Vin-V_HP)=V_HP-V_LP
となります。
今回のまとめ
移相回路の本質は、V_LP-V_HP(または、V_HP-V_LP)をアナログ演算して出力する回路であることです。しかも、オペアンプ、および、RC回路は、ともに1つで済みますから、巧妙な回路構成と言えます。恐らく、これ以上、簡略にはできないと思われます。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。
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