
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -レベルシフト(5)-
目次
①はじめに
今回は、入力DCオフセットが電源電圧範囲を超えている場合のレベルシフトを調べてみます。
これまでと同様に、5V単電源オペアンプ回路を想定し、DCオフセット12V、信号振幅±0.1Vの入力信号をレベルシフトと10倍増幅をして、DCオフセット2.5V、信号振幅±1Vの出力信号を得る回路を考えます。
②レベルシフトの具体例
反転アンプ、入力12V±0.1V、出力2.5V±1V
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_反転_入力12V±0.1V.asc」を参照してください。
入力DCオフセット12Vが反転10倍されますから、反転アンプ基本回路のままでは、出力は-120V±1Vとなっています。
以前に示した一般式を使って、オペアンプの+入力端に印加する電圧Vsftを計算します。
反転ゲインG=10、入力オフセット電圧VINofs=12V、出力オフセット電圧VOUTofs=2.5Vですから、
Vsft=(VINofs×G+VOUTofs)/(G+1)=(12×10+2.5)/(10+1)=122.5/11=11.13636・・・V
となります。
さて、この回路を実際のオペアンプICで実現できるでしょうか。5V単電源で動作しているオペアンプICの+入力端に電源電圧を超える電圧が印可されることになり、正常動作は望めません。それどころか、オペアンプICを破損してしまう可能性も高くなるでしょう。オペアンプICを正常に動作させる条件の一つに「同相入力電圧範囲」があり、オペアンプICの-入力端電圧、+入力端電圧は、この電圧範囲内になければなりません。同相入力電圧範囲は、ICの型番ごとに異なりますが、一般的に、動作中に供給される電源電圧より狭い範囲です。
反転アンプ、入力12V±0.1V、出力2.5V±1V、実現可能回路
この問題を解決するために、以下の方針で考えてみましょう。
第1段階:大きすぎる入力DCオフセットを抵抗分圧によって、処理可能な値にまで小さくする。
第2段階:分圧された信号に対してレベルシフト、増幅をする。この際に、信号源抵抗が発生していることに留意する。
具体的な一例を示します。入力信号12V±0.1V を1/4に分圧し、3V±0.025Vの信号とします。この信号から出力2.5V±1Vを得るために、ゲイン40倍のアンプ回路でレベルシフトをします。
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_反転_入力12V±0.1V_改良.asc」を参照してください。
入力信号の分圧抵抗には、30KΩと10KΩを使って、10/(30+10)=1/4の分圧比を実現しています。
信号源抵抗値は、30KΩと10KΩの並列接続抵抗値ですから、(30×10)/(30+10)=300/40=7.5KΩとなります。
したがって、反転ゲイン40倍とするため、帰還抵抗に7.5KΩ×40=300 KΩを使っています。
一般式を使って、オペアンプの+入力端に印加する電圧Vsftを計算します。
反転ゲインG=40、入力オフセット電圧VINofs=3V、出力オフセット電圧VOUTofs=2.5Vですから、
Vsft=(VINofs×G+VOUTofs)/(G+1)=(3×40+2.5)/(40+1)=122.5/41=2.987804・・・V
となります。
なお、3V±0.025V、信号源抵抗7.5KΩの入力源から2.5V±1Vを出力する動作の確認のために、ゲイン40倍の差動アンプ回路(入力抵抗7.5KΩ、帰還抵抗300 KΩ)でレベルシフトを実現した回路も収めてあります。
非反転アンプ、入力12V±0.1V、出力2.5V±1V、実現可能回路
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_非反転_入力12V±0.1V_改良.asc」を参照してください。
非反転アンプの場合も、上記同様に考えれば、同相入力電圧範囲の問題を回避することができますし、入力インピーダンスが高いため、抵抗分圧回路によって発生する信号源抵抗を考慮する必要がありません。
今回のまとめ
次回は、入力DCオフセット-12Vの場合について取り上げてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。
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