
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -レベルシフト(6)-
目次
①はじめに
前回に続き、入力DCオフセットが大きく電源電圧範囲を超えている場合のレベルシフトを調べてみます。今回の入力DCオフセットは、-12Vです。
②レベルシフトの具体例
反転アンプ、入力-12V±0.1V、出力2.5V±1V
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_反転_入力-12V±0.1V.asc」を参照してください。
以前、「反転アンプ、入力-1V±0.1V」のレベルシフト回路を取り扱いましたが、その回路と構成、定数ともに同じです。
反転アンプ基本回路では、入力DCオフセット-12Vが反転10倍され、出力は120V±1Vとなっています。出力DCオフセットを120Vから2.5Vに「引き下げる」ために、加算反転アンプ構成のレベルシフト用入力に電圧を印加します。レベルシフト用入力から出力へのゲインは、信号入力側と同じ10倍に設定されていますから、印加すべき電圧は、(120V-2.5V)/10=11.75Vとなります。
加算差動アンプ構成によるレベルシフト回路では、レベルシフト用入力に12V、出力オフセット設定入力Vrefに2.5Vを印加しています。
前回の入力オフセット12Vの場合には、同相入力電圧範囲が問題となりましたが、この回路では、オペアンプの非反転入力がグランドに接続されて0Vとなっていますので、単電源用オペアンプICであれば実現可能です。
オペアンプICの動作には問題がありませんが、レベルシフト用に電源電圧(5V)より大きな電圧が必要となっています。電源電圧以下であれば、抵抗分圧などの回路を使えますから、レベルシフト用電圧が電源電圧以下になるような回路に変更すべきでしょう。
反転アンプ、入力-12V±0.1V、出力2.5V±1V、実現可能回路
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_反転_入力-12V±0.1V_改良.asc」を参照してください。
加算反転アンプの各入力は、独立にゲイン設定できます。変更前の回路では、レベルシフト用入力のゲイン設定を信号入力と同じ10倍としていたため、レベルシフト用電圧は、11.75Vが必要でした。これを5V以下にするため、レベルシフト用入力のゲイン設定を40倍に変更して(RG=10KΩ→2.5 KΩ)、レベルシフト用電圧を2.9375Vにしています。
加算差動アンプ構成によるレベルシフト回路では、レベルシフト用差動入力ペアのゲイン設定を40倍として、3Vを入力しています。出力オフセット設定入力Vrefは、2.5Vで変更はありません。
非反転アンプ、入力-12V±0.1V、出力2.5V±1V
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_非反転_入力-12V±0.1V.asc」を参照してください。
以前、「非反転アンプ、入力-1V±0.1V」のレベルシフト回路を取り扱いましたが、その回路と構成、定数ともに同じです。
抵抗加算回路のレベルシフト用入力に(120V+2.5V)/10=12.25Vを印加することにより、目的のレベルシフト動作となっていますし、同相入力電圧範囲についても問題ありませんが、前述の理由によって、レベルシフト用電圧が電源電圧以下になるような回路に変更すべきです。
非反転アンプ、入力-12V±0.1V、出力2.5V±1V、実現可能回路
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_非反転_入力-12V±0.1V_改良.asc」を参照してください。
抵抗加算回路は、各入力のゲインを独立に設定することはできませんが、ゲイン比率は変更できます。変更前の回路では、レベルシフト用入力のゲインと信号入力のゲイン比率を1:1としていたため、レベルシフト用電圧は、12.25V でした。これを5V以下にするため、レベルシフト用入力のゲインと信号入力のゲイン比率を(4/5):(1/5)=4:1に変更しています(レベルシフト入力側抵抗=10KΩ→2.5 KΩ)。信号入力から出力へのゲインを10倍にするため、非反転アンプのゲインを50倍に変更しています。レベルシフト用入力から出力へのゲインは、(4/5)×50=40倍となり、レベルシフト用電圧を3.0625Vにしています。
今回のまとめ
レベルシフト回路については、今回で一段落し、次回からは、オペアンプの2段増幅について取り上げてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。
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