
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -2段増幅(3)-
①はじめに
オペアンプICを使った増幅器には、反転アンプと非反転アンプがありますから、2段増幅構成には、以下の4種類の組み合わせが考えられます。
1.反転アンプ+反転アンプ
2.反転アンプ+非反転アンプ
3.非反転アンプ+反転アンプ
4.非反転アンプ+非反転アンプ
入力と出力の信号極性の違いはありますが(1と4は同相、2と3は逆相)、増幅器としての優劣を一概に論じることはできません。なお、「反転アンプは非反転アンプより歪み特性が優れている」という説をよく耳にしますが、ここでは、そのような特性の差が問題とならないような場合を想定しています。
②実用回路設計に必要な検討事項
2段増幅をどのような構成とするか、いくつかの条件で考えてみたいと思います。
高入力インピーダンス
高入力インピーダンスとするには、1段目を非反転アンプとすれば容易に実現できますが、絶対ではありません。要求されるインピーダンス値、その他の条件によっては、反転アンプを使うこともできます。例えば、入力インピーダンス100KΩ、1段目のゲイン10倍として、帰還抵抗は1MΩとなりますが、この定数で周波数特性などに問題ないのであれば、反転アンプとすることが可能です。
単電源動作
両電源動作であれば、どのような構成であっても、「扱いやすさ」に、それほどの差異は生じませんが、単電源動作では、周辺回路を考慮する必要があります。
具体例を挙げて考えてみましょう。5V単電源動作で、2.5V±0.01Vの信号を100倍増幅して2.5V±1Vを出力するものとします。
シミュレーション
シミュレーションファイル「単電源2段アンプ_ゲイン_100.asc」を参照してください。
反転アンプ2段構成と非反転アンプ2段構成の回路を収めています。
回路の特性は同等ですが、動作の基準電圧2.5Vを供給している回路に違いがあります。反転アンプでは、オペアンプの非反転入力に基準電圧2.5Vを印加すればよいのですが、ここには電流は流れません。微少なバイアス電流は流れますが、信号電流は全く流れません。したがって、電源5Vから抵抗分圧回路で生成した2.5Vをそのまま給電できます。さらに、デカップリング、ノイズ除去のためのCRフィルタを挿入することも、何の問題もなく行うことができます。
一方、非反転アンプでは、ゲイン抵抗の一端(反転アンプとして考えた時の入力端)に基準電圧2.5Vを印加するのですが、ここには、信号電流が流れますので、低出力抵抗の電圧源、かつ、電流流入も可能でなければなりません。そのため、抵抗分圧回路で生成した2.5Vをそのまま接続できません。シミュレーション回路では、オペアンプを使ってバッファとしています。また、フィルタを挿入することも困難です。つまり、基準電圧は、「高品質」な電圧源としなければなりません。
今回のまとめ
上述の考察から、単電源動作の増幅器では反転アンプが「扱いやすい」といえそうです。ただし、増幅ブロック単独でなく、他の回路部分とトータルで考えて、例えば、他の回路でも高品質な基準電源が必要であれば、反転アンプの有利さは軽減されることになるでしょう。さらに、より厳しい特性要求がある場合など、負電源回路を追加して、両電源動作とした方が良い場合もあります。
オペアンプ応用回路シリーズは、今回で完了とします。また、次回のテーマは未定でございますが、取り上げて欲しいテーマがございましたら、ご連絡いただけましたら幸いに存じます。
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