
電気・電子回路における非線形回路 -アンチログアンプ-
①はじめに
対数の数学的性質を利用すれば、乗除算などの非線形演算を線形演算(加減算など)に置き換えることができますから、ログアンプ+オペアンプ+アンチログアンプにより、非線形演算回路を構成できます。いくつかの例を挙げてみましょう。
・2つのアナログ値の乗算 → それぞれを対数に変換、加算、対数から逆変換
・2つのアナログ値の除算 → それぞれを対数に変換、減算、対数から逆変換
・アナログ値の2乗 → 対数に変換、2倍、対数から逆変換
・アナログ値の平方根 → 対数に変換、(1/2)倍、対数から逆変換
(nを正の実数として、n乗、n乗根の演算も可能)
②非線形演算の用意
アンチログアンプ
非線形演算回路を構成するためには、対数値からリニア値に逆変換するアンチログアンプが必要ですので、この回路を考えてみましょう。トランジスタのベース・エミッタ間に対数化された電圧を印加し、コレクタ電流値に比例する電圧を出力すればよいです。
シミュレーション
シミュレーションファイル「アンチログアンプ_出力特性.asc」を参照してください。
アンチログアンプ回路は、オペアンプの反転アンプ回路の入力抵抗をトランジスタに置き換えればよいのですが、ログアンプで使ったトランジスタと同一特性でなければなりませんから、同じ型番のNPNトランジスタを使った回路となっています。
したがって、入力は反転入力(-VBE)となりますが、出力は非反転出力(正電圧)となります。シミュレーション回路では、ログアンプの出力をアンチログアンプで逆変換していますので、リニアな入力がそのまま出力に再現されています。
dB逆変換回路
前回、dB出力する回路を構築しましたが、この逆変換回路を構成してみましょう。dB出力を得る演算は、「ログアンプの反転対数出力を非反転」とし、「入力1V固定のログアンプの出力(を非反転とした)電圧を減算」し、「33.3倍に増幅」する、3段階の演算でした。この逆の演算をすればよいのですから、「(1/33.3)倍」し、「入力1V固定のログアンプの出力(を非反転とした)電圧を加算」し、「非反転を反転」して、アンチログアンプに入力すれば、逆変換出力が得られます。
シミュレーション
シミュレーションファイル「dB逆変換回路構築.asc」を参照してください。
3段階の演算機能を示した回路を収めてあります。出力(V_AntiLog_Out) は、入力(Vin)と全く同じとなっています。なお、入力1V固定のログアンプ出力は、dB出力アンプ側と共有しています。
逆変換のための演算回路は、差動アンプによって実現できます。
シミュレーション
シミュレーションファイル「dB逆変換アンプ.asc」を参照してください。
この回路では、差動アンプのVref入力を利用しています。
今回のまとめ
dB(対数)への変換回路とdBからの逆変換回路が得られましたので、非線形演算の用意が整いました。対数状態で加減算などの演算をした後、逆変換をすればよいわけです。
非線形演算のみを目的とするならば、dB値(20dBで2Vとなっている)は必要ありません。つまり、33.3倍に増幅し、(1/33.3)倍して元のスケールに戻している演算は不要です。しかしながら、内部の対数値を観察しやすくするために、この回路のままで実験を続けたいと思います。
次回以降、実際に乗算などの非線形演算をシミュレーションする予定です。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。

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