
電気・電子回路における負帰還による直線性の改善実験
①はじめに
現在、増幅回路の多くは、オペアンプICを使った負帰還増幅回路で構成されていると思います。オペアンプIC自体の性能向上により、汎用的なアンプでは、直線性(あるいは、歪み)が問題になることは無いでしょう。私自身、優れた直線性(低歪み特性)を要求されるようなことが無かったので、アンプの直線性を意識することはありませんでした。「負帰還増幅回路は、負帰還の作用によって直線性が良い」という、漠然とした知識を持っていただけでした。
前回、トランジスタ差動アンプの直線性について調べ、その最後に、負帰還によって直線性が改善されることを示しましたが、負帰還による直線性の改善についてもう少し掘り下げて実験してみようと思います。
②負帰還による直線性の改善
非直線特性の実現
直線性の改善実験のためには、「直線性の悪いアンプ」を擬似的に作らなければなりません。種々の回路が考えられますが、最も簡単そうなダイオードスイッチによる、折れ線近似回路としました。この回路についての解説は割愛しますが、抵抗値、および、電圧値をカットアンドトライにより調節してS字曲線的な特性としました。
シミュレーション
シミュレーションファイル「疑似非直線アンプ回路.asc」を参照してください。
折れ線近似回路の前後に、電圧制御電圧源を配して、入力0V~1V、出力0V~1Vのゲイン1倍の非直線特性のアンプを擬似的に構成しています。
入力(Vin)、出力(Vout_NonLiner)を観察してください。入出力特性が見事に「曲がって」いることが確認できます。
以降の実験では、上記の疑似非直線アンプの前段にさらに1段のアンプ(電圧制御電圧源)を追加して、ゲインを持たせることで、「特性の良くないオペアンプ」を模擬しています。
バッファ接続
シミュレーション
シミュレーションファイル「負帰還量と直線性改善_バッファ接続.asc」を参照してください。
オペアンプによるバッファアンプ(ゲイン1の非反転アンプ)接続とした回路を収めてあります。オペアンプとしてのゲイン(オープンループゲイン)は、2倍、10倍、100倍です。ゲイン1の非反転アンプ構成ですから、ループゲインは、オープンループゲインと同じく、2倍、10倍、100倍となります。
ゲインエラーが発生して、出力が1V以下になっていますので、直線性を観察しやすくするために、比較用の理想直線電圧源(Vout_Liner_xx)を設けてあります。
各出力(Vout_LoopGain_xx)を観察すると、ループゲインが大きいほど、直線性が改善されて、10倍でほぼ直線となっているように見えます。この特性で十分かどうかは、個別の応用事案ごとの要求仕様によりますが、元の「曲がり具合」からの改善効果は実感できると思います。
ゲイン10接続
シミュレーション
シミュレーションファイル「負帰還量と直線性改善_ゲイン10接続.asc」を参照してください。
オペアンプによるゲイン10倍の非反転アンプ接続とした回路を収めてあります。オペアンプとしてのゲイン(オープンループゲイン)は、20倍、100倍、1000倍としてあります。これによって、10倍のアンプを構成した時のループゲインは、2倍、10倍、100倍となり、前項のバッファ接続時と同条件となります。ゲイン10倍ですので、入力0V~0.1V,出力0V~1Vとなっています。
各出力(Vout_LoopGain_xx)を観察すると、バッファ接続と同様に改善されています。さらに、ループゲインが同じならば、全く同一な特性になるようです。この辺りの事情は、数式を使った議論をすれば、明確になると思われますが、今回の目的は、改善実験ですので、数式は割愛します。
今回のまとめ
次回以降は、電源回路の基礎シリーズを予定しています。電源回路について取り上げて欲しいテーマがございましたら、ご連絡いただけましたら幸いに存じます。参考にさせていただければと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。

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