
電気・電子回路における電源回路の基礎 -ツェナーダイオード+トランジスタ(4)-
①はじめに
前回、トランジスタ1本を追加して帰還制御を実現しましたが、出力電圧に帰還制御用トランジスタのVBE分の電圧誤差が出ていました。今回は、これを補正する回路を追加して、動作を調べてみようと思います。
前々回では、ツェナーダイオード+エミッタフォロア回路でのVBE補正を行いました。その考え方は、「ツェナー電圧そのままではなく、VBE分(出力に現れる極性とは逆方向に)シフトした電圧を生成して基準電圧とすることで、補正を行う」というものです。
②ツェナーダイオード+トランジスタ
帰還制御VBE補正
帰還制御を付加した回路では、出力電圧はツェナー電圧+VBEとなっていますから、ツェナー電圧-VBEを生成して基準電圧とすれば、VBE補正ができます。NPNトランジスタのエミッタフォロアを追加し、ベースにツェナー電圧を入力すれば、その出力電圧はツェナー電圧-VBEとなりますので、必要な電圧が得られます。
シミュレーション
シミュレーションファイル「ZD+Tr_帰還制御_VBE補正.asc」を参照してください。
NPNトランジスタQ3によってエミッタフォロアを構成し、その出力を帰還制御用トランジスタQ5のエミッタに接続しています。VBEが補正されて、出力電圧(Vout_1)=ツェナー電圧(Vz_2)となっていることを確認できます。
エミッタ抵抗R3の抵抗値
VBE補正の観点からは、Q3とQ5のエミッタ電流は同じ電流値とすることが望ましいです。シミュレーション回路での実測によると、Q5のエミッタ電流は4.8mA、エミッタ電圧(Vz-VBE)は5.5Vとなっています。Q3 のエミッタ電流を同じ4.8mAにするには、エミッタ抵抗R3には4.8mA+4.8mA=9.6mAを流す必要があります。従って、R3=5.5V/9.6mA≒573Ωになりますので、560Ωとしています。
差動アンプによる構成
エミッタフォロアによるVBE補正を追加した回路は、差動アンプの構成となっております。
シミュレーション
シミュレーションファイル「ZD+Tr_差動アンプ構成.asc」を参照してください。
同じ回路を見やすく書き直したものを収めてあります。
これを見れば、差動アンプの非反転入力に基準電圧を入力し、反転入力を出力に接続して、出力電圧=基準電圧に制御する負帰還回路が構成されていることが理解できると思います。
差動アンプ構成の応用展開
差動アンプによる構成と考えれば、応用展開が容易になります。
シミュレーション
シミュレーションファイル「ZD+Tr_差動アンプ構成_応用例.asc」を参照してください。
これまでと同じ回路では、出力電圧=基準電圧(ツェナー電圧)ですが、基準電圧を分圧することで、ツェナー電圧よりも低い出力電圧を得ることができます。回路例では半分の電圧を出力しています。
また、出力を分圧して帰還をかけると、ツェナー電圧よりも高い出力電圧を得ることができます。回路例では2倍の電圧を出力しています。
なお、これらの回路は、動作原理の理解を主眼としていますので、回路定数は最適化されていません。基本的動作に支障が無い程度のものとお考え下さい。
今回の一言
次回は、これまでのまとめとして、いくつかの関連する「小ネタ」を予定しています。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。

国内初!!超小型、6V入力DC/DCコンバータ新登場!!
業界最小サイズ!:独自開発のパッケージングで実装面積は3mm×3mm、厚さ1.4mm
抜群の変換効率!:最大90%以上
詳細は ここ をクリック
ご興味、ご関心のある方は「お問い合わせ」をクリックの上、ご連絡下さい。