
電気・電子回路における電源回路の基礎 -ツェナーダイオード+トランジスタ(6)-
①はじめに
前回に続いて、これまで提示してきた電源回路の過渡特性を調べてみたいと思います。今回は、高速負荷変動時の過渡応答です。
なお、前回の【注意】で示したように、シミュレーション結果について、個々の数値、波形などに拘泥することなく、大雑把な傾向をつかんで、参考とする程度に留めて下さい。
②ツェナーダイオード+トランジスタ
負荷変動特性
高速の負荷電流変動に対する出力電圧の過渡応答を見てみましょう。
シミュレーション
シミュレーションファイル「ZD+Tr_負荷変動_過渡特性.asc」を参照して下さい。
各回路の出力に電圧制御電流源を接続し、制御電圧によって負荷電流を変化させています。ツェナーダイオード回路では2mA+変動成分1mA、ツェナーダイオード+トランジスタ回路では、50mA+変動成分10mAを負荷電流としています。負荷電流の変動成分は、100KHzの矩形波形状で、立ち上がり、立ち下がりは、ともに10nsで、かなり高速にしています。
出力電圧のグラフを拡大してみると、出力電圧変動は、以下のような結果となっています。
・ツェナーダイオード・・・・・・約1.8mVオーバーシュートなし
・ZD+エミッタフォロア・・・・約7.1mVオーバーシュート7.0mV
・ZD+エミッタフォロア2段・・約7.3mVオーバーシュート8.6mV
・帰還制御基本回路・・・・・・・約0.4mVオーバーシュート2.7mV
・帰還制御_差動アンプ構成・・・約0.5mVオーバーシュート4.8mV
この結果を見ると、帰還制御回路は、負荷変動に対して有効な働きをしているようですが、過渡応答が複雑な波形となっています。オーバーシュートのピーク値そのものは小さいのですが、DC変動分との比率は10倍弱となっており、不安定要因が潜んでいるようです。一方、エミッタフォロア回路では、オーバーシュートのピーク値とDC変動分は同程度で、比較的素直な波形です。
シミュレーション
シミュレーションファイル「ZD+Tr_負荷変動_周波数特性.asc」を参照して下さい。
上記の結果を周波数特性の面から確認してみました。ただし、電圧制御電流源の制御電圧と出力電圧の関係ですので、減衰量の値そのものではなく、各回路の減衰量の差に注目して下さい。
1MHzあたりまでは、平坦な特性で、かつ、各回路の減衰量の差はDC変動値の相対比と一致しています。帰還制御回路では、1MHzより高域で、エミッタフォロア回路では、10MHzより高域で減衰量が減少(グラフは上昇)しており、これらの回路でオーバーシュートが発生していることが裏付けられています。一方、ツェナーダイオード回路は、高域でさらに減衰量が増えています。これは、「オーバーシュートなし」と符合します。
帰還制御回路では、100MHzより高域で特性が大きく変動していますが、(前回の入力変動の過渡応答特性と同様に)今回のような原理的な回路では、詳細な議論は無理がありますので、「帰還回路は不安定要因に注意」という、一般的な結論で良いでしょう。
今回の一言
次回は、電源回路には必須とも言える、コンデンサの付加について調べてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。