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第2回:オペアンプによる移相回路

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第2回:オペアンプによる移相回路

最近、テレビでは「地デジカ」を見ない日がありません。ご存知の通り、デジタル方式への移行の案内ですが、 現在、テレビに限らず、あらゆる電子機器のデジタル化が進んでいます。これに伴い、「アナログは旧式で劣る、 デジタルが優れている」といった本質の理解に欠ける論調に接することも多くなってきました。 確かに、高機能性、多機能性はソフトウェアを含むデジタル部分に大きく依存しますが、電子システムの 「基本性能」はアナログ部分で決まります。

 電子機器に対する要求は、より多様化、高度化しているにもかかわらず、アナログ技術者は慢性的に不足しているようです。 一人前のアナログ技術者の育成には長い年月を要します。この際、アナログ技術者を「絶滅危惧種」に指定し、国が保護、増殖に 努めることが日本の将来にとって必要であると「半分本気で」政策提言したいと思います。

 さて、多くのアナログ回路に不可欠な機能部品といえば、オペアンプです。 半導体メーカー各社からさまざまな特性のオペアンプが発売されており、大抵の回路は、オペアンプとCRだけで構成可能になりました。

 オペアンプ回路として代表的なものは、反転アンプ、非反転アンプ、ボルテージホロワ、レベルシフトなどですが、 これらの動作原理を理解するには、差動アンプを基本とするのがよいと考えています。 付属ファイルを参照していただければご理解いただけると思いますが、オペアンプは理想オペアンプであると考えて、 まず、+入力端子の電位を計算し、イマジナルショートで-入力端子が同じ電位になるとして、入出力特性を計算します。 複素インピーダンス計算をすれば、周波数特性がわかります。

 付属ファイルには、基本接続からの応用例として移相回路を取り上げてあります。あまり紹介されることのない回路ですが、 おもしろい特性を持っています。入出力応答の計算式はあえて省略しましたので、興味と時間のある方は計算してみてください。 複素インピーダンスの計算は、難しくはありませんが、沢山の項がゴチャゴチャと出てくるので、間違いやすいものです。 「脳トレ」「根気強くなるための修行」には、お勧めです。 なお、LTspiceIV 用の移相回路のシミュ レーションファイル も用意してありますので、「修行済み」の方は、これで「遊んで」ください。

ところで、この移相回路がどのように使われているのか、具体的な情報は持ち合わせていません。どなたかご存知でしたら、 ぜひご教示をお願いします。私は10年ほど前に一度だけ使ったことがあります。10MHzの位相検波回路の実験用治具としてユニバーサル基板 に手作りしたもので、オペアンプは「傑作」EL2044でした。 可変抵抗を回すと連続的に位相だけが変化する様子に「へぇー」という感想を抱いたのを覚えています。

 オペアンプIC自体の性能向上のおかげで、要求仕様が「ゆるい」回路であれば、基本回路そのままで実用になる場合もあります。 しかし大抵は、動作原理上不要な、さらには、特性悪化を招くような抵抗、コンデンサなどを追加しなければならなくなります。 これらは、「現実のオペアンプと理想オペアンプの差」「入出力に接続される外部回路の特性」および「ノイズなど目的外の信号の存在」 などを考慮した結果です。

 実は、実用回路設計で最も重要なのは、電源です。「腹が減っては戦はできぬ」という名言?は、 ICにも当てはまります。「電源」というと「電源回路」を考えるのが常ですが、ICにとっての電源とは「電源バイパスコンデンサ」です。 電源端子に接続されたコンデンサは、「電源回路」から常時充電されている「電池」と考えるべきです。この観点から考えると、 「バイパス」あるいは「デカップリング」という呼称はいささか不適切ではないか、と思われますので、とりあえず、 「電源コンデンサ」という呼称を提唱しておきたいと思います。

 オペアンプの電源コンデンサとして、0.1μFのセラミックコンデンサがよく使われますが、高速オペアンプでは、 0.1μF+1000pFなどとして、より高速な電流変動に対処します。 ここで大切なことは、扱う信号の周波数帯域ではなく、オペアンプ自身の帯域によって電源コンデンサを選択しなければならないことです。

 オペアンプは、アナログコンピュータの構成要素として開発されたことが、その名称の由来らしいのですが、詳細は存じ上げません。 アナログコンピュータは、微分方程式を数量的に解くことができるそうです。果たして、現役で活躍しているのか、過去の遺物なのか、不明です。 現在では優秀なオペアンプが手ごろな価格で入手可能ですから、アナログコンピュータを作ってみるのもおもしろそうです。 アナログ掛算器ICもありますから、非線形微分方程式も解けそうです。どなたか作ってみませんか。 高速リアルタイム制御が必要な場合に経験が生かせるかもしれません。

今回取り上げました、テーマに関する計算式は OPAMP100412.pdf にまとめました。

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