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第14回:昇降圧DC/DCコンバータ -その1-

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第14回:昇降圧DC/DCコンバータ -その1-

目次

  1. 昇降圧比

第九回、第十回以降、中断していた「DC/DCコンバータの基礎シリーズ」ですが、今回から再開します。第三章は、昇降圧コンバータです。2回に分けて取り上げる予定です。

入力電圧と出力電圧がほぼ等しい、あるいは、その大小関係が変わってしまうような電源回路を要求されることがあります。例えば、リチウムイオン電池を入力とする3.3V電源を実現するには、昇降圧コンバータが必要です。昇降圧コンバータの回路方式として、最近では、スイッチ素子4個とインダクタ1個で構成するDC/DC用ICが入手可能であり、変換効率がよいなど、優れた特徴をもつ電源回路ですが、ICの仕様によって適応範囲が決まりますので、設計の自由度はあまりありません。とはいえ、「ぴったりはまる」場合はお勧めです。特に、スイッチ内臓タイプのICが使える場合には、驚くほど少ない部品点数で実現できてしまいます。

従来からの昇降圧コンバータの定番といえば、SEPIC回路のようです。これは、2個のインダクタと結合コンデンサを使うもので、初めて見ると「霊験あらたか」な感じのする回路です。個人的な感想ですが、巧妙な回路技術の結晶といえるのではないでしょうか。この回路を考案された方に賞賛を送ります。SEPIC回路は、「ローサイドスイッチ1個でよい」、あるいは、「ほとんどの昇圧用ICが使える」ことが、実践的な利点ですが、「インダクタが2個」に抵抗があるかもしれません。

SEPIC回路の基本動作を理解する方法として、ひとつの考え方を述べてみます。まず、付属のシミュレーション回路をご覧ください。入力からインダクタを経て、スイッチングFETまでの部分は昇圧DC/DCと同じです。出力側の整流ダイオードと平滑コンデンサの部分も昇圧DC/DCと同じです。SEPIC回路では、この間に結合コンデンサと第二のインダクタで構成される「LCハイパスフィルタ」がある、と解釈できます。このように解釈することで、昇圧DC/DCとの比較でSEPIC回路の動作を考えることが可能になります。つまり、スイッチングによって作られた波形が、昇圧DC/DCではそのまま整流されるが、SEPIC回路では交流成分のみが整流される、ということになります。結合コンデンサによって阻止される直流成分とは、入力電圧ですから、SEPIC回路の出力電圧は、(昇圧DC/DCの出力電圧)-(入力電圧)となります。

1.昇降圧比

出力電圧と入力電圧との比、昇降圧比=出力電圧/入力電圧、を決めているのは、スイッチングのON時間とスイッチング周期との比率、デューティーサイクルだけです。スイッチング周波数、インダクタ値、負荷電流には関係ありません。

昇降圧比=(ON時間)/(OFF時間)=D/(100-D)

ここで、DはデューティーサイクルでON時間とスイッチング周期との比率(%)です。ダイオードの順方向電圧降下などは無視しており、インダクタ電流は連続的に流れている、としての話です。実際には、DC/DCコンバータICを使うことが多いと思いますが、希望する昇降圧比が得られるかどうかは、動作可能なデューティーサイクルの範囲によります。

ここで、スイッチングトランジスタの耐圧、電流について注意を喚起しておきたいと思います。スイッチングトランジスタがOFFの時には、(入力電圧+出力電圧)の電圧が発生します。ONの時には、2個のインダクタ電流の合計電流が流れます。回路を一見しただけでは判りにくいため、失敗する恐れがありますので、くれぐれもご注意を・・・、かくいう私も部品選定で間違えそうになったことがあります。

次回の続編では、以下の項目を掲載予定です。

2.インダクタ電流

3.過渡応答

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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