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第15回:昇降圧DC/DCコンバータ -その2-

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第15回:昇降圧DC/DCコンバータ -その2-

前回に続き、昇降圧DC/DCコンバータであるSEPIC回路の基礎について取り上げます。まず、前回の内容を簡単に要約しておきます。

1.昇降圧比

昇降圧比は、デューティーサイクルのみで決まる。

昇降圧比=(ON時間)/(OFF時間)=D/(100-D)

Dはデューティーサイクルで、ON時間とスイッチング周期との比率(%)。

引き続き、SEPIC回路の基本的な動作特性について、調べた結果を解説します。

2.インダクタ電流

出力側インダクタ(Lb)に流れる平均電流は、昇降圧比によらず、出力電流に等しくなります。インダクタ電流が連続的に流れるような条件である限り、出力電流値、インダクタ値、スイッチング周波数などに影響されません。

平均出力側インダクタ電流=出力電流

入力側インダクタ(La)に流れる平均電流は、出力電流と昇降圧比のみで決まり、以下のようになります。

平均入力側インダクタ電流=出力電流×昇降圧比=入力電流

インダクタ電流の三角波成分(リップル電流)は、昇圧DC/DCコンバータと同様で、インダクタ値に反比例、入力電圧に比例、デューティーサイクルに比例、スイッチング周波数に反比例し、出力電流には関係しません。

3.過渡応答

SEPIC回路の過渡応答は、やや複雑です。インダクタ2個と結合コンデンサ、および、出力コンデンサが相互に影響するためです。以下の記述は、私自身の理解、解釈に基づくものであり、正確性に欠ける恐れがあることをご承知おきください。

出力電圧の変動は、出力側インダクタと出力コンデンサで形成される共振回路に誘起された減衰振動と考えられます。同時に、入力側インダクタと結合コンデンサ、および、出力側インダクタで形成される共振回路にも振動が誘起されますが、入力側インダクタ電流の変動と出力側インダクタ電流の変動が相殺する関係にあるため、出力電圧の変動には寄与しないようです。原理的には無害と言えるわけですが、実用時には留意する必要があります。インダクタ電流の振動幅が大きすぎると、許容インダクタ電流を超えたり、インダクタ電流が不連続になる可能性があるからです。シミュレーション回路のインダクタには、直列抵抗が含まれています。これは、上記の共振を軽減するためですが、この抵抗値を変えて、インダクタ電流の振動の様子を観察してみてください。なお、実用回路では、結合コンデンサに並列に、コンデンサと抵抗を直列にした回路を接続する方法もあります。

SEPIC回路は、昇降圧が可能であるだけでなく、注目すべき特長があります。それは、スイッチングが停止した時に、出力が入力から切り離される、ということです。結合コンデンサによって直流的な経路が絶たれていますから、当然のことなのですが、異常時の保護を考慮しなければならない実用回路においては、極めて有利です。このため、通常の昇圧DC/DCコンバータでよい場合でも、保護回路が必要であれば、SEPIC回路は検討に値すると思います。

次回は、反転DC/DCコンバータを取り上げる予定です。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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